ビジネス

2021.05.05

ランドローバー「常識を壊す」挑戦 なぜ999段の石段を駆け上ったのか

999段の石段を駆け上るランドローバーのチャレンジ(YouTubeより)




ユーチューブで動画を探してみた。すると、動画には天門山の99のヘアピンカーブを走る、前半部分もあることが分かった。13年間このヘアピンカーブを走っているというバスドライバーの男性が、「40キロ以下でしか走らない」と口にする。カーブを通る際、「乗客は悲鳴を上げる」とも。ホーピン・タンは、そのヘアピンカーブを猛スピードで走り抜けた。ヘアピンと石段を走破するプロジェクト名は「ドラゴンチャレンジ」。ヘアピンが白い竜に見えることから名づけられたようだ。


ヘアピンカーブが白い竜に見える(YouTubeより)

チームは入念に準備した。車が本当に石段を登れるのか、テストを繰り返した。結果、無事クリアした。なんという緊張感。なんという無謀なチャレンジ。しかし、車の性能を伝える上で、これ以上の見せ方はないとも感じた。筆者も思わず感情移入した。動画の再生回数は400万回を超えている。

カルトブランディングに直結するチャレンジ


ランドローバーは、これまでにいくつものプロジェクトにチャレンジしてきた。「インフェルノダウンヒルチャレンジ」では、世界で最も難易度が高いとされるダウンヒルレース「インフェルノ」のコースを、レンジローバースポーツで走破した。高低差2170メートル、最大斜度75度、全長14.9kmのコースは、走破というより“滑降”という表現の方がふさわしい。英国のレーシングドライバー、ベン・コリンズは、チャレンジ成功後に安堵した表情を見せ、ゆっくりと車を降りた。その様子からは、真剣なチャレンジであることが伝わってきた。

ランドローバー
インフェルノダウンヒルチャレンジの様子(YouTubeより)

英国のコベントリー環状道路では2018年10月、自動運転で周回する実験に取り組んでいる。ランドローバーの資料によると、「英国で最も困難な道路レイアウト」だというが、史上初の自動運転による環状道路の周回を達成した。

最高時速40kmで、車線変更や合流、交差点での退出といった動作を実現。「将来の自動運転車を開発する上で役立つ」としている。また、ランドローバーは今後5年間で6台の電気自動車を開発する予定だともいう。意欲的な挑戦である。

拙著『カルトブランディング 顧客を熱狂させる技法』(祥伝社新書)の中で触れたが、カルトブランディングには以下のキーワードがある。

イデオロギー/異端児/敵/リーダーシップ/象徴/愛/コミュニティー/緊張感/聖地/常識を壊す/ストーリー/ライフスタイル/体験/文化(カルチャー)/不変/共創

ランドローバーのチャレンジからは、異端児/リーダーシップ/緊張感/常識を壊す/ストーリー/共創、を感じる。チャレンジという行為自体が、いくつものカルトブランディングの要素を内包しているのである。
次ページ > ブランドの前向きな挑戦が歓迎される時

文=田中森士

ForbesBrandVoice

人気記事