北イタリア「ウェルネスバレー」から美容業界に新風 アグロコスメの世界観

旅になかなか行けないいま、セルフケアに投資するのも良いかもしれない

このような美容と健康や食などホリスティックな業界の統合や新業態の誕生はイタリアにおいても目覚ましい。前述のOWAYがあるエミリア・ロマーニャ州は、歴史的にフードバレーとして生ハムやチーズなどの伝統的な食品企業が多いが、この地域は数年前から新たに「健康とウェルネス」の産業集積エリアになりつつあるのだ。行政機関、観光施設、学校、大学が連携している産学連携で築かれ実際にウェルネスバレー (WELLNESS VALLEY)と呼ばれている。

イタリア市場で、ウェルネス製品やサービス業界として認識されているのは、スポーツはもちろん、ヘアを含むボディケア、観光、温泉、食事、睡眠ケアであるサプリやハーブティー、トレーニングやマッサージなどの家電、ストレス緩和効果が望める農作業や工芸などのアクティビティまで非常に多岐に渡る。

OWAY
OWAYを筆頭に、エミリア・ロマーニャ州はウェルネスの産業集積地になりつつある

セルフケアは、健康と地球への投資に


4000人のイタリア人のライフスタイル、習慣、消費傾向を対象としたフィリップス社調査「幸福の経済に関するレポート 2020」によると、コロナ前430億ユーロあったウェルネス市場は370億ユーロとマイナス14%だったものの、他業界に比べて減少は少ない。一人あたりのウェルネスに関する年間支出は2018年の1300ユーロから1200ユーロだったものの、ジムやサロンも閉店している時期であっても、平均して月100ユーロもセルフケアに費やされることに驚く。そのうち約4割が健康的な食品に費やされているが、その次はボディケアで次に大きい23%のシェアを占める。

さらに調査でわかったのは全体の40%近くの人が環境に優しいブランドや製品を定期的に購入し、さらに環境にやさしい製品にもっとお金をかけたいと考えている人も40%にのぼっていることである。18~24歳の若いグループは特にその傾向が強く、彼らの傾向としては原材料を確認し、加工にケミカルなものが入っていないことはもちろん、どんな環境でどのように作られているのかという情報までネットで調べ、かつ容器や包装がエコロジカルかなども含めてひとつのプロダクトの価値だと考えているということがうかがえる。

旅にもなかなかいけないいま、ちょっと贅沢にゆっくりと自然に包まれるような生命力のある植物の力に満ちたケアプロダクトに時間やお金をかけるのは、健康と地球への投資と考えてもよいのではないだろうか。そして食べ物だけでなく誰がどこでどんな風に作ったものか、シャンプーやトリートメントであっても体に纏うものは意識を向けて選びたい。


連載:イタリア発「サステナブルな衣食住遊イノベーション」
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文=齋藤由佳子 写真=OWAY

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