北イタリア「ウェルネスバレー」から美容業界に新風 アグロコスメの世界観

旅になかなか行けないいま、セルフケアに投資するのも良いかもしれない

このゴールデンウィークは遠出の旅も近場を出歩くことも制限され、心と体のメンテナンスにより気を使う方も多いのではないだろうか。

私が住むイタリアは先日ようやく段階的な移動制限が緩和され、たくさんの人が解除後まず先に向かったのは美容院だった。特に明けてすぐの週末は、普通は休日にしているお店も特別営業をするなど、朝から晩までぎっしりと予約が入っているお店ばかり。

コロナで飲食店やホテルなどと同様、大きな影響を受けた美容業界。イタリア・ボローニャ発のサロン専用製品オーガニックブランドとして世界的な支持を誇るOWAY(オーウェイ)に携わる宮坂之さんは、このコロナ禍にも新しい顧客が増えたという。なぜ、いま注目されているのだろうか。

ボローニャの小さな老舗から10年前に大転換


OWAYは1948年に創業の70年以上の歴史ある美容総合メーカーrolland社が生み出したオーガニックコスメブランドで、10年ほど前から「アグリコスメティカ (R)」という概念をもとに、厳密なバイオダイナミック農法によってハーブ類を栽培する自社農園Ortofficina(オルトッフィチーナ)をボローニャ近郊で運営している。

そこで育った生命力溢れる植物のエッセンスを、高品質なコスメプロダクトとして可能な限り凝縮させ、主にサロン向けに製造・販売している。

特にヘアケアプロダクトに特化し、サロン専用の高品質なプロダクトのラインを展開すると、瞬く間にOWAYの世界観に惹きつけられた国内外のヘアサロンやトップスタイリストから支持を得るようになった。


ゼロカーボンニュートラル設計の社屋

宮坂氏によると、日本市場をゼロから開拓してから約12年経過した現在では、OWAYブランドは広く認知されており、特に注目すべきは都会の大手サロンのみならず、地方の小さな個人経営サロンでの取り扱いも非常に多いことだという。また今回のコロナによって新たな地方サロンの参画も増えたと聞いて驚いた。

都会の有名サロンにわざわざ通っていた顧客が、密になることを避けるため小さな地方サロンに行き始め、そこでカスタマーが愛用するOWAY製品を口コミで広げてくれたと宮坂氏は言う。

OWAYの商品戦略は、美容師自らがその理念を深く理解して惚れ込み、世界観のファンになってもらうことにある。だからカスタマーへの説明も自然と機能ではなく、エコでサステナブルな商品背景をしっかり伝えるようになる。現在はオンラインが中心だが、本社には世界中の美容師が集まり、ブランド全体の世界観を体感してもらう研修が頻繁に行われている。

面白いのはヘアサロン専用の鏡台や商品棚など店舗全体の世界観づくりのために、自ら家具工房を開設し、販売もしているところだ。そこでも廃材やエコロジカルな素材を使うなど全体のブランドメッセージが込められているのだ。実際、OWAYが毎年選ぶ世界のトップサロンに選ばれた店舗を見ると、内装や立地も自然観が活かされているものが多い。


OWAYの製品を利用するサロン
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文=齋藤由佳子 写真=OWAY

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