ライフスタイル

2021.05.05 11:00

自分でやってみる「セルフX」に隠された、柔軟に時代をわたり歩くヒント


コロナ禍で誰もが困ったのが、ヘアカット問題でしょう。美容室に行くことが不要不急なのかを考える人も多かったはず。そこで出てきたのが「セルフカット」。これも、セルフネイルと同様にセルフカットを行う人は元々いたものの、関連商品の急増ぶりには驚きました。美容室に行こうか悩む家族の髪を切ってあげたり、姉妹でカットし合ったり、ほっこりとするシーンをつくり出す「セルフX」もありました。

ここまでは自宅内でのセルフX事例ですが、コロナ禍で進んだ地方移住の動きも、「セルフX」と相乗効果があるよう。便利だけれど窮屈な都会よりも、ちょっと不便でも「セルフX」をあれこれ試してみる生活も悪くないかも、と考えて地方移住をする方も多いようです。これらの動きは外出自粛期間の一時的なトレンドではなく、コロナ禍を乗り切ろうと奮闘するいまの私たちの心に、自然と芽生えた「やってみよう」というポジティブな気持ちが「セルフX」を生んだ、と私は考えています。

きっかけは確かに致し方ないものだったかもしれません。しかし、私たちが潜在的にもつ「やってみるのも悪くない」という感覚が呼び起こされ、おのおのが自分でできることに対して手を出している様子は非常に興味深いものです。

また、私たちは「セルフX」を行う主体であると同時に、「セルフX」のきっかけを提供するチャンスを平等にもっています。お店とセルフXは必ずしも対立・競合するものではありません。セルフXのせいで顧客が減るととらえるのではなく、セルフXの流れを自社らしく応援するとしたらどんなかたちが可能か考え、お店での提供と並行してサジェストしていけるところは柔軟で強い。いま展開しているものを、セルフでやってもらう場合のメリットを考え、そのときにネックになりそうなハードルを取り除き製品化を狙うのもひとつの手でしょう。

提供する側に立つなら、自身の提供価値を研ぎ澄ましたうえで、柔軟にアプローチの仕方を考えていく。利用する側なら、新たな自分らしいセルフXにトライしてみる。そんなセルフXには、ニューノーマルを柔軟にわたり歩いていくためのヒントが隠されているように感じます。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

山田 茜◎電通Bチーム美容担当。東大卒ママインスタグラマー。Instagram@chocolat.akaneはフォロワー1.9万人、ママキャリアブログ運営中。女性のインサイト分析を得意としForbes JAPANWEBにてコラムを連載中。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。

文=山田 茜 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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