式では、最明寺が準備したレインボー数珠が授けられ、誓いの言葉を仏前で交わす。寺院で挙式する「仏前式」自体、減少しているが、その魅力はなんだろうか。
ももさんは「白無垢や袴などきちんとした和装で、仏様の前で挙式できるのは日本でも珍しいと思います。同性愛に厳しい宗教もありますが、千田さんがおっしゃるように仏教の『生きとし生けるものすべて平等』という教えは誰も傷つけず、私たちも胸を張って堂々と気持ちよくいられました」と語る。
G7で「同性婚」を認めないのは日本だけ いまこそ伝えたい
このタイミングで模擬挙式を行なったことには、千田副住職のある思いがあった。
今年3月の札幌地裁の同性婚訴訟の「違憲判決」は、全国5カ所で起こされた同様の集団訴訟で初めての判決となった。一方で、1審では国が立法を怠ったと認めず、賠償を命じなかったことを不服として原告側は控訴した。現行の民法や戸籍法の「夫婦」について、国は同性どうしの結婚を認めていない。G7のうち、同性婚を認めていないのは日本だけ。
千田副住職は「日本の法律では同性婚が認められていませんが、結婚式はできるんですよね。仏教にはその土壌があります。2人の幸せそうな姿を写真で伝えることで、また法律とは違ったアプローチができるのではないでしょうか。今回の判決が世界に注目されるなかで、政治とは離れた立ち位置の伝統的な宗教施設であるお寺だからこそできる、LGBTQ支援があることを世界中に知ってもらえたら」と語る。
ももさんは、札幌地裁の判決については「率直に嬉しかったですね。地裁とはいえ、日本で越えられなかった壁でした。ですが、まだ制度が変わるわけじゃないのでこれからの動向を注目しています。同性婚を認めると少子化が進むという意見がありますが、子どもが欲しいと思っている当事者カップルはいます。私たちもそう思っています。子どもや家族のことを考えると、どんな人でも安心して家族になれる制度に変わっていく必要があると思います」と述べた。
ななさんは「日本の教育では人と違う個性を恐れる風潮がありますが、みんな違って当たり前。またLGBTQの人たちもみなさんと同じように暮らしていて、幸せな生活を求めています。世の中には家族にも反対されている人がいますが、どんな人でも家族の幸せを願うはず。これからも当事者の幸せを発信していきたい」と前を向く。
模擬挙式の様子は、ピグレッツのYouTubeチャンネルでもゴールデンウィーク明けに紹介する予定だ。誰もが幸せに暮らせるように──。将来の「その日」を願って発信を続けていく。