サッカー・バスケ・ソフト、「女子リーグ」3代表が語る課題と展望

(左下) JDリーグ宇津木キャプテン (右上) Wリーグ河瀨会長 (右下) WEリーグ岡島チェア


一方で、結果を出せばすべて課題が解決するわけではない。メダルという成果を活かすためにも、地道な取り組みが必要になる。宇津木キャプテンはこう苦言を呈する。

「どこかで企業に頼りすぎていますよね。自立しなくても会社が守ってくれている環境がありますから。自分たちがソフトボールをどうしたいか、あまり考えてないままやっているところがある。色んな意味で、甘いなって。これからは選手たちの意識改革が一番大事だという感じがします。

うちの協会は男子ソフトボールもランキング世界一と男女ともに強い。それに、野球にも女子があります。世界では野球とソフトの連盟が一つになっていますから、五輪復帰に向けてもこの4種目で盛り上げていけるように話し合いをしています。

また、少子化で子供たちにどうソフトの魅力を伝えていくか、今後の課題として考えていかなければいけない。一番必要な取り組みだと思っています。地方に行くとソフトを好きな子たちが5人くらいでやっていたりして、合同チームを作って参加するとか、いろんな形があっていいと思うんです。女子野球をやりながらソフトの大会にも出ていたりする。今後はそれもありかなということで、互いの協会で話し合いながら、普及活動をしています」



女性アスリートたちを誰がどう支えるか


会社に一生を守ってもらえる保証があるなら、そのままでいいのかもしれない。しかし現実には、スポーツを支えてきた企業にも事業や部活動の縮小や統廃合が起こり得る。女性アスリートの自立は、競技を越えた課題だ。

岡島チェアによると、世界のダイナミックな動きが日本人選手のセカンドキャリアにも絡んでいる。

「FIFA(国際サッカー連盟)が女子に注力しています。女子サッカーを推進している加盟国に年間50万ドル(約5000万円)のお金が出ることになり、より多くの国が力を入れるようになりました。

イスラム系の国やインドなどでは女性がスポーツをする際、男性の指導者は避けたいという文化があるので女性指導者へのニーズが高く、日本から派遣して欲しいとの要請がかなり来ています。日本サッカー協会もアジア貢献事業を進めていて、男子はすでに多くの指導者を派遣していますので、WEリーグの選手が指導者ライセンスを取得しやすいように講習会を整備し、セカンドキャリアとして活躍する道筋を作っているところです」

そもそもプレーする女性アスリートたちを誰がどう支えるのか?

アメリカは間違いなくスポーツの先進国だが、女性アスリートやセレブが女性スポーツを経済的に支える関係性がある。在米生活の長い岡島チェアはこう紹介する。

「女子テニスの大坂なおみさんは、スポーツをする女性、若い女の子を応援したいという考えで、女子プロサッカークラブに投資をしています。まずリーグ(NWSL)に声をかけ、何名かのオーナーに会って、「ノースカロライナ・カレッジ」への投資を決め、2番目のオーナーになりました。

ブッシュ元大統領の娘、ジェナ・ブッシュとクリントン元大統領の娘、チェルシー・クリントンの二人もワシントン・スピリットという女子チームに投資をしています。あと女優や元サッカー選手がクラブのオーナーになったりと、アメリカでは女性が女性のスポーツを応援する機運が出ています」


Photo by Kevin Mazur/Getty Images

支援者を求めていくチャンスや7リーグ・全公式戦「SPOZONE」での中継配信スタートなど、広がる女性スポーツ、WAPの可能性について、は後編記事「女性の観客を増やす! 女子リーグが示す競技を越えたアライアンスの価値」(10月8日公開)にて。


岡島 喜久子◎中学2年時に日本初の女子サッカークラブとして誕生した「FC ジンナン」に入会しプレーを続け、社会人になった年に日本女子代表入り、その後海外転勤を機に引退。早稲田大学商学部卒。ケミカルバンク(現・JPモルガン・チェース銀行)やメリルリンチなど金融企業を経て、2020年7月、WEリーグ(公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ)初代チェアに就任

河瀨直美◎映画作家。奈良を拠点に映画を創り続け、一貫したリアリティの追求による作品は、カンヌ映画祭をはじめ国内外で高い評価を受ける。東京オリンピック2020公式映画監督、2025年大阪・関西万博プロデューサー兼シニアアドバイザーを務める。中学、高校時代にはバスケットボール部に所属し、高校在学中にキャプテンとして沖縄・海邦国体に出場。2021年6月、Wリーグ(一般社団法人バスケットボール女子日本リーグ)会長に就任

宇津木 妙子◎中学1年時にソフトボールを始め、強豪・星野女子高等学校を経てユニチカ垂井に所属、1974年に世界選手権出場。引退後、1997年に日本代表監督に就任し、2000年シドニー五輪で銀、2004年アテネ五輪で銅メダルを獲得した。2005年に日本人初、国際ソフトボール連盟殿堂入り。その後も監督業を続けながら、2014年には日本ソフトボール協会副会長、世界野球ソフトボール連盟執行理事に、2020年9月、一般社団法人 日本女子ソフトボールリーグ機構(JDリーグ)副会長、2021年3月に副会長兼キャプテンに就任

文=大島和人 編集=宇藤智子

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