ワクチン接種進む英国「スポーツ観戦」でも規制緩和、財政支援も

ボリス・ジョンソン英首相(Photo by Rob Formstone-WPA Pool-Getty Images)

そのワクチン政策で世界の注目を集める英国。欧州有数のスポーツ大国でもあり、最近では欧州スーパーリーグ騒動が大きな話題となった。

英国のスポーツ産業が新型コロナにより受けた影響と政府による支援策、変異株による影響の可能性を示しつつも進められるロックダウンの段階的緩和について、PwC UKでスポーツビジネスを統括するHarry Ryan-Smith、Matt Taylor、Clive Reevesに聞いた。


──COVID-19感染拡大の影響により、英国では数度のロックダウンが行われました。現在の英国スポーツ産業がおかれる状況や、政府がスポーツ産業に対し実施する支援策について聞かせてください。

Harry:英国では多くの試合が中止・延期になり、スポーツ産業にとって大きな収入源であるチケット収入や放映権収入が大幅に減少した。その結果、産業全体として厳しい状況におかれている。

このような状況を見越し、英国政府はスポーツ産業への財政的な支援を複数回実施している。特にCOVID-19感染拡大以前から財政状況が苦しかった組織には手厚い支援を用意し、例えば今年1月にはラグビー、女子サッカー等の競技に対し、3億UKポンド(約462億円)の「Sport Winter Survival Package」を提供している。

Clive:サッカークラブが大きな財政的ダメージを受けている。チケット収入や放映権収入が失われたことに加え、冬の移籍市場で大型移籍が少なかったことから、移籍金による収入も塞がれてしまったことは痛手であった。

こうした状況から、組織再編に取り組むサッカークラブは少なからず存在する。スポーツ組織で人材が失われていることを考えれば、財政的な回復にはまだ時間がかかると言えるだろう。

Matt:英国政府はスポーツ組織の破綻を防ぐためにあらゆる策を打っている。例えば昨年末には政府の依頼を受けて、プレミアリーグとイングランドサッカー協会が下部リーグに対して5千万UKポンド(約77億円)の支援を約束した。これはプレミアリーグの財政状況に比較的余裕があったからこそ実現できた施策だが、他方多くの統括団体には同様の余裕はない。また、政府の財政支援に頼り続けることは現実的ではないだろう。

そのような状況を踏まえると、スポーツ産業が回復するためには従来のように観客を戻し、収益を確保することが重要になると考えられる。英国内の感染者数が減少傾向にあることやワクチンの接種が進んでいることから、政府は5月から段階的な規制緩和を決定しており、これはスポーツ産業にとって段階的に観客が戻ることを意味している。
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文=菅原政規、安西浩隆、寺尾慎吾

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