──スポーツ組織は選手のデータも多く所有しています。選手のデータについてはどのような活用事例があるでしょうか。
選手のデータは、統計データと生体データに二分できる。
統計データに関しては、複数のリーグがファンエンゲージメントに活用している。例えば、試合映像においてリアルタイムに選手のスピード、ジャンプ力などのデータを反映することで、視聴体験はよりエキサイティングになる。また、ベッティングやファンタジースポーツにおいて統計データは不可欠だ。
生体データについては、選手のプライバシー保護の観点から活用事例が少ない。ファンにとっては自身の生体データと選手の生体データを比較する体験ができればビジネスチャンスは広がるだろうが、やはりプライバシー保護の観点から実用化の障壁は高く、実現には時間がかかるだろう。
欧州のスポーツ産業ではCOVID-19をきっかけとして、これまでスポーツ組織がためらっていた変革の推進に拍車がかかっていることが明らかになった。
Davidによれば、COVID-19をきっかけとしてスポーツ組織から “思い切った” 相談を受けることが増えており、すでに一定の成果を挙げる組織もあるという。
スポーツ産業における変革は今後も勢いを増すと言えるだろう。
そして、スポーツ産業が外部との協働を増やしていることも見逃せないポイントだ。
特に日常的にイノベーションが生まれるデジタル領域での事例が増加していることから、スポーツ産業にとってこれまで協働相手と考えられていなかったような領域や団体との協働が期待できるかもしれない。
次回のインタビューでは、欧州を代表するスポーツ大国である英国のメンバーから現地スポーツ産業の状況を聞く。
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David Dellea(写真中央)◎PwC Switzerland ディレクター/PwC Sports Business Advisoryグローバルリーダー。スポーツ産業における15年以上の経験を有し、クライアントの戦略策定、組織運営、収益化等に関するサービスを提供する。クライアントは多岐にわたり、スポーツ連盟、大会主催者、投資家、スポンサー、メディア、代理店、官公庁等実績多数。スポーツテック企業を中心に、複数の社外顧問を務める。ローザンヌ大学(法学士)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(MBA)。
菅原政規(写真右)◎PwCコンサルティング合同会社シニアマネージャー。2005年より現職。中央省庁等の公共機関に対するコンサルティングに携わり、調査、業務改善、情報システムに至る案件を多く手がける。近年は、スポーツ政策及びスポーツ関連企業・団体向けのコンサルティングを実施。PwCが毎年発行する「PwCスポーツ産業調査」の日本版監修責任者。早稲田大学スポーツビジネス研究所招聘研究員。
安西浩隆(写真左)◎PwCコンサルティング合同会社シニアアソシエイト。2017年より現職。University of California, Berkeley卒。在学中はUC Berkeleyアスレティックデパートメントにてセールスやマーケティングの施策立案・実行に携わった他、スポーツ庁にて日本版NCAA(現UNIVAS)に関するインターンシップに従事。PwC入社以降は複数のスポーツ案件に従事するとともに、海外PwCスポーツビジネスアドバイザリーとの連携に務める。
連載:Global Sports Industry Insights