コロナ禍で進む「欧州スポーツビジネスの組織変革」キーワードは3つ

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──スポンサーシップの役割はどのようにシフトしているでしょうか。

従来のスポンサーシップにおいて企業は独占性を重視してきたが、現在はファンとのエンゲージメントを重視している。現在の風向きとして、スポンサーシップは二極化していると言えるだろう。

1つはデジタル広告に特化したもの。もう1つはアクティベーションによりスポーツ組織と企業のシナジー創出を目指すパートナーシップ型である。いずれのタイプも、デジタルを活用しファンとの接点を求める点が共通している。

──試合が開催されない、あるいは無観客で開催される中で、企業はスポンサーシップに関してどのような期待を持っているでしょうか。

スポンサー企業にとって、試合会場で看板を出すだけの時代は終わったと言える。

根本的な目的は露出からエンゲージメントにシフトしており、スポンサー企業は従来重宝された「会場に設置した企業のロゴが何度テレビに映ったか」という指標よりも、その先にあるエンゲージメントを重視している。

測定できるエンゲージメントは主にデジタル領域で発生するため、スポーツ組織は試合映像以外にも様々なコンテンツを拡充し、ソーシャルメディアやOTT等のプラットフォームを活用することが重要になる。

試合映像以外のコンテンツ拡充は従来から求められていた課題であったが、COVID-19の試合中断によりその必要性はスポーツ産業の誰もが実感しただろう。

──デジタル領域において「データ」が重要であることは言うまでもなく明らかです。欧州のスポーツ産業ではどのようにデータを活用していますか。

前提として、理想的なレベルでデータ活用を実践できているスポーツ組織は、欧州においても数が少ない。例えばあらゆる組織がソーシャルメディアのアカウントを運用しているが、それは義務的に運用されているケースがほとんどだ。

スポーツ組織は、ファンクラブ会員、チケット購入、OTT等あらゆる接点でデータを取得するチャンスがあるが、有効なデータを取得していないか、取得していても活用方法が分からない、あるいは手が回っていない組織が多いのが現状だ。得られたデータを基に顧客をセグメント化して、それぞれの層に対して有益な情報を発信、その成果を検証する、というサイクルを回すことを目指すべきだろう。

幸いなことに、スポーツ組織にとってファンと繋がる接点はいくつもある。繋がりたい相手に合わせて、使うメディアやキャンペーンを変えることもできるし、ソーシャルメディアを使えば個人に合わせたテーラーメイドの発信ができる。

このようなデータの活用は、北米のスポーツにおいて事例が先行している。例えば北米リーグが推進するデジタルコレクティブル(NFT)はその最たる例と言えるだろう。


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文=菅原政規、安西浩隆

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