コロナ禍で進む「欧州スポーツビジネスの組織変革」キーワードは3つ

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各都市でロックダウンなどの行動制限措置が取られる中、欧州のスポーツ産業はどのような状況におかれているのか。

PwC Switzerlandでスポーツビジネスを統括しているDavid Delleaに聞いたインタビューの後編では、欧州のスポーツ組織が困難を乗り越えるために推進する変革について具体的に紹介する。

>> 「ビッグクラブ」でも大打撃の欧州スポーツビジネス 一方で明るい兆しも(インタビュー前編)


──COVID-19の影響もあり、欧州では身体運動とバーチャル機能を組み合わせた「ハイブリッドスポーツ」と呼ばれる分野のスポーツが生まれ、急速に普及しています。一部ではIOCが五輪種目に取り入れるための検討を始めたとの報道もありますが、国際競技連盟やスポーツ組織はどのような反応をみせているでしょうか。

多くの国際競技連盟がハイブリッドスポーツに注目しており、eスポーツのように新たな競技のフォーマットとして定着するものと考えている。実際に自転車やボート等の競技では、ハイブリッドスポーツが新たな競技フォーマットとして定着しつつあり、大会も開催されている。

国際競技連盟は、これまで伝統性を重んじる傾向が強かったが、COVID-19の影響を受けて創造的な取組みが増えている。

従来一つの拠点における物理的な繋がりで競い合うものとされてきた “スポーツ” をデジタルの繋がりにより再定義したハイブリッドスポーツはその最たる例と言えるだろう。そして、このような事例は今後も増えるものと考えている。

バスケットボールでは、新たな競技フォーマットとして3x3が生まれ、五輪競技に採用される等して定着しているが、このような新たな競技フォーマットは、ガバナンス・運営等あらゆる領域に変化をもたらすとともに、連盟にとって成長するための大きな機会をもたらす。ハイブリッドスポーツについても、3x3と同様の効果が見込めると言えるだろう。

例えば器具やアプリの領域でイノベーションが生まれることは間違いなく、その先にはファンと直接繋がる機会がある。特にデジタル領域と親和性の高い若い世代のファンと繋がるチャンスと言えるだろう。

このようなメリットがあることから、ハイブリッドスポーツは一過性ではなく、今後も残り続けるものと予測している。

──ファンとの繋がりが期待できるとのことですが、これまで開催されたハイブリッドスポーツに対し、ファンは視聴者としてどのような反応を示していますか。

ハイブリッドスポーツに関するファンのデータがなく明言はできないが、新たなレベルのエキサイトメントをもたらしていると言えるだろう。

ハイブリッドスポーツには、新たなファン層の獲得に加え、既存のファンに対し新規コンテンツを提供するという期待効果も存在する。これはeスポーツと同様の期待効果であり、このような新たな形式のスポーツコンテンツは今後も増え続けるだろう。ファンにとって、コンテンツの選択肢が多いことは歓迎されるべきことだ。
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文=菅原政規、安西浩隆

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