また、愛知県豊明市では「チョイソコ」というMaaSサービスがスタートしています。サービス導入時に、電子メディアによるプロモーションが行われましたが、ターゲット層である高齢者に情報が行き渡らなかったため、集会の開催、紙のDMの送付、市役所のロビーにポスターの掲示をするなど方法を切り替えました。
電話によるバスの予約受付や、高齢者向けの地区イベントの開催など、高齢者のより健康的な生活をサポートしながらサービスの需要を高める活動を行なっています。さらに、地元企業や施設に停留所のスポンサーになってもらう「エリアスポンサー制度」を通じ、運賃や自治体からの交付金の他に収入源を確保しています。
日本の地方におけるカーシェアリングサービスの仕組み(イメージ: C4IR)
「チョイソコ」は、既存の交通事業者と競合するのではなく、補完し合う関係を構築するよう配慮されています。「豊明モデル」と呼ばれるこのシステムは、2020年12月時点で全国13の自治体で導入されており、2022年度内には少なくとも20の自治体にまで拡大する予定です。
モノの移動にも解消すべき格差が 「ラストマイル問題」解決には
地方交通システムの課題は、人の移動だけでありません。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により急速に普及したeコマースにより、地方と都市における配送インフラの格差が一層拡大する恐れがあります。
人口密度が高く都市化が進んだ地域では、オンラインショッピングなどのデジタル・エコノミーを下支えする配送サービスをより低コストで実現することができます。これは、いわゆる「ラストマイル」、高効率の大口輸送ではなく購入者の家までひとつずつ荷物を配送する宅配に関して特によく当てはまります。購入者に荷物を届ける「最後の距離」が、地方では必然的に長くなるため、この最後の過程を担う配送システムが崩壊の危機に瀕していると一部の専門家は指摘しています。
しかし、崩壊は避けられないわけではありません。世界経済フォーラム第四次産業革命センターによる最近の調査「効率的で持続可能なラストマイル物流の実現に向けて(Towards efficient and sustainable last-mile logistics)」では、自動配送ロボットなどの革新的なテクノロジーが、環境負荷を低減しながらラストマイル物流の実現性を高めることが示されています。
モビリティと配送の両方において、新しいテクノロジーは、高齢者の生活と過疎化した地方部の生活の質を向上させることができるでしょう。特に、社会に変革をもたらす規模でテクノロジーの力を最大化するには、これまでにない政策や枠組みが必要不可欠です。適切なアプローチを取れば、交通におけるインクルーシブな未来の実現は不可能ではありません。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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