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日本の市場で初めてCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を務めた長瀬次英にとって、フェラーリはいつも気になる存在だった。新型クーペ「Ferrari Roma(フェラーリ・ローマ)」との出合いは、マーケターの創造力を刺激する驚きとワクワクの連続だった。


「本来あるべき売り方や、消費者に体験してもらいたいことが何なのかを忘れてはなりません」

日本初のCDOとして知られる長瀬次英は、マーケティングの本質についてこう語る。KDDI、フェイスブック・ジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日本ロレアルなど数々のグローバル企業でマーケティングやデジタル施策を講じてきたが、長瀬はデジタルだけに固執しない。

「アパレルであれば顧客に店まで来てもらい、コーディネートやセールストークをしながら顧客の顔を覚え、また店に来てもらうのが本来の売り方なのに、すべてをECに置き換えてデジタル化してしまうのはナンセンスです。店舗でやっていることをどうやってオンライン上で表現するか。アナログの部分をどこまで残し、デジタルでどこまで引き出すかを考えることが重要です」

このように長瀬は、手段がデジタルであろうがアナログであろうが、ユーザーとのコミュニケーションを重視してきた。昨今はコロナ禍で苦戦をしいられているアパレル業界だが、長瀬がCEOを務める「BORDERS at BALCONY(ボーダーズ アット バルコニー)」は、そんななかでも売り上げを伸ばしている。


TOKYO FMのチーフ・デジタル・プロデューサーなど約10社の事業戦略やデジタル戦略に携わる長瀬次英

アナログのよさを再認識させるためにデジタルを導入


マーケティングでは、ブランドを消費者に伝えるための物語性が重視されるが、長瀬によればそれはブランドがつくるものではなく、受け手の中で思い描くものであることが望ましいという。

「例えばルイ・ヴィトンから何をイメージするか聞いたら、ラグジュアリーファッションと応える人もいれば旅行鞄と答える人もいて、受ける印象は人によって違います。ブランドは消費者にどういうストーリーを思い描いてもらい、どういうことをSNSでつぶやいてもらいたいかを想像してつくり込む必要があります。これが以前のブランディングと違う点です」

良質でコンセプトがしっかりしているブランドほど、消費者はそれを使用するストーリーを思い描きやすい。そうした観点から長瀬にとって気になる存在だったのがフェラーリだ。長瀬はスポーツカーに対して特別な思い入れがあったわけでないが、インスタグラムのフェラーリ公式アカウントをフォローし、折につけその美しい車体を眺めていた。

そんな長瀬が新型クーペ「フェラーリ・ローマ」と対面した。フェラーリ・ローマは1950年代から60年代の古きよきローマの時代をイメージした抑揚感のあるフォルムが特徴で、長瀬はその容姿に「フェラーリらしい流麗なスタイリング。タイヤに合わせて盛り上がっているフェンダーが美しい」とひと目惚れした。


エレガントな佇まいだが、高速走行時にはリアウィンドウ後方に格納されたスポイラーがせり上がり、戦闘態勢に入る

ところが車内に足を踏み入れると、外観のコンセプトとは真逆で、最新のデジタルツールが搭載されている。運転席の周囲にはタッチパネル式の操作部が設置され、エンジン起動からエアコン操作、ミラー調整、シート調整にいたるまで操作することができる。長瀬は気分を高揚させながら乗車すると、最初に感じたのは、フェラーリ・ローマが女性にも適したクルマであることだった。ローマといえば、世のフェラーリ好きの男性の憧れのクルマである。レースモードにすればサーキットでも高いパフォーマンスを発揮する600馬力の高性能マシンに、なぜそのようイメージを持ったのだろうか。

「女性がスポーツカーを敬遠するのは、エンジン音がうるさくて乗り心地が悪いと感じるからですが、フェラーリ・ローマはエンジン音が優しくて車内で普通に会話ができますし、2ペダルなので運転もしやすく、動き出しがスムーズで乗り心地が抜群です。内装にラグジュアリー感がありながらタッチパネルが搭載されていて、慣れれば非常に使いやすい。女性が憧れるクルマになりうると感じました。女性経営者がステータスとして乗るのもいいですし、旦那さんの送り迎えに使うのもカッコいいと思います」


高級感が漂う車内にはセンターディスプレイに加え、運転席と助手席の両方にタッチパネルが据え付けられている


ブレーキを踏み込み、ステアリング上の「START/STOP」表示にタッチするだけで起動するエンジンに気分を高揚させる長瀬

まさに女性がストーリーを描きやすいモデルというわけだ。アイドリングストップ機能も搭載されており、地球環境に優しいことも女性が受け入れやすいポイントだ。

それでもフェラーリがもつ、走りを追求するDNAは失われていない。フェラーリ・ローマは歴代の4シータークーペのなかで最もパワフルなモデルであり、4本が突き出たマフラーはいかにも戦闘的だ。長瀬から見るとデジタルの取り入れ方も絶妙で、フェラーリを駆る楽しみを損なわない。

「指紋認証や音声操作を取り入れたりと、デジタルの程度を高めようと思えばもっとできたはずです。それをあえてしなかったのは、ユーザーが直接手で触る感覚を大事にしているからでしょう。革のダッシュボードもそうですし、ドアを開ける際に下から手を入れて引くことにもドキドキ感があります。アナログのよさを再認識させるためにデジタルを使っており、フェラーリ本来のよさが失われていません。デジタルに振り回されていないところが素敵です」

女性が元気だと社会も元気になる


アパレルブランド以外にも、TOKYO FMのチーフ・デジタル・プロデューサーや低糖質フードデリバリーサービスを提供するゴーフードのCCD(チーフ・クリエイティブ・デザイナー)などさまざまな事業や要職に携わっている長瀬だが、次の事業領域としていま最も注目しているのは「ウェルネス」だ。

パラレルワーカーとして多忙な日々を過ごす長瀬は、ちょっとの隙間時間を利用して体を鍛えたり自転車に乗るなどして健康に留意し、ウェルネスに関心を抱いてきた。ところが、ウェルネスに関する体系的な情報はあまり存在しない。それならば自分で情報を発信しようと事業化することを考えたのだ。

「人々がもう少し自分の幸せに向き合い、本当に好きなものを追求するためのヒントになる情報を提供するとともに、ショッピングができるプラットフォームをつくりたいと考えています。ジャンルはアパレル、運動、ヨガ、生き方、マインドフルネス、スピリチュアルなど多岐にわたります。ストレスリリーフという観点からすればフェラーリもウェルネスに入ると思いますし、幸福度を高めるという点で共感できます」

長瀬は近々、元アナウンサーの方と共同で新会社を設立する予定で、現在アプリの開発を進めている。オンラインだけにこだわらず、イベントなどオフラインも展開していく計画だが、それは長瀬がこれまでの経験で“リアル”の場の重要性を認識しているからだ。

「インスタグラムは、ユーザーがいつどこで何を見て、何に『いいね』したかをすべて把握しています。リアルの場所でユーザーが何をしているかを知っていることは、ビジネスをするうえで強みになります。フェラーリにとっても同じで、フィードバックが得らえる試乗会は非常に大事なはずです」

ウェルネス事業でもリアルの場をつくることで消費者から生の情報を吸い上げる狙いだ。長瀬は、将来的にはラグジュアリーの分野がウェルネス業界を席巻していくと予測する。接客にかける時間が長く、ラグジュアリーほど顧客情報をもっているブランドはないからだ。

長瀬は化粧品、紅茶、SNS、エンターテインメントなど女性をターゲットとする事業に多く携わってきたが、ウェルネスは女性との親和性が高い。長瀬が目指すのは、女性層の幸福追求を足掛かりに社会を変えることだ。

「女性が元気だと、社会や国も元気になります。女性が知識を得てそれぞれの生き方や考え方を構築できるようになれば、ウェルネスという考え方が男性にも伝播し、社会がよりよくなっていくはずです」


エンジン音が優しいうえに操作性や乗り心地もよく、「女性が憧れるクルマになりうると感じました」と語る長瀬


1950年代から60年代の古きよきローマの時代をイメージした抑揚感のあるフォルムが特徴的


Ferrari Roma
古きよきローマの時代をイメージしたエレガントさにパワーを兼ね備えた、まさにイブニングドレスに身を包んだF1マシン。ローマで2019年11月に発表。日本では20年4月に発表され、21年に販売開始。全長4656mm×全幅1974mm×全高1301mm。3855ccのV8ターボをエンジンフロントに搭載し、0-100km/hの加速は3.4秒、最高速度は320km/hを実現する。車両価格2682万円。

Ferrari Roma
https://www.ferrari.com/ja-JP/auto/ferrari-roma


ながせ・つぐひで◎中央大学卒業。KDD(現KDDI)を経てインスタグラム日本事業責任者、日本ロレアルCDO、LDH JAPAN CDO兼執行役員などを歴任。現在はTOKYO FMのチーフ・デジタル・プロデューサーやBORDERS at BALCONYのCEOなど約10社の事業戦略やデジタル戦略に携わっている。

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本記事|01 日本初のCDO・長瀬次英が語る、「Ferrari Roma」が女性も虜にする理由
公開中|02 アストロスケール岡田光信が「Ferrari Roma」に見いだしたビジネスの本質
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Promoted by Ferrari / photograph by 木村博道 / text by 大橋史彦 / edit by 高城昭夫 / directed by 安藤修也

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