「持続可能」に舵を切った新法律で、日本の漁業はどう変わるのか?

Monty Rakusen/Getty Images

日本人の食に欠かせない新鮮な刺身や鮨。しかし近年の水産資源激減で、果たして次世代の人たちはそれらを食べることができるのだろうか。実は、日本の水産資源は、そんな懸念もささやかれる状況となっている。

日本の漁業は、いま大転換期を迎えている。2つの画期的な法律が成立したからだ。1つは昨年の12月1日に施行された改正漁業法。もう1つが、同月11日に公布された「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律(水産流通適正化法)」だ。

これは、水産物の国内流通の適正化とIUU(違法・無報告・無規制)漁業由来の漁獲物流入防止を目的とし、漁業者には漁獲証明書の作成、サプライチェーンにはその情報伝達を義務付けるものだ。この2つの法案により、なんと戦後70年ぶりの抜本改革が実現し、日本はついに持続可能な漁業へと舵を切ったことになる。

これらの法案の成立には、世界中から多くの賞賛が寄せられた。今年3月16日には世界や東アジアを活動範囲とする複数のNGOが、そして4月14日には世界の水産トップ企業など約100社が所属する3つの国際プラットフォーム(SeaBOS、Global Tuna Alliance、International Sustainable Seafood Foundation)が、それぞれ法案成立を歓迎する共同声明を発行した。

管理漁業への転換で大きな成果が


では、世界も注目する新法により日本の漁業にはどのような進化がもたらされるのだろうか。

まず、先立って昨年12月1日に施行された改正漁業法では、漁獲枠の上限を決めるなどの「管理漁業」にシフトした。

日本では旧法のもと、これまで乱獲や未成魚の漁獲などに対する規制や違法漁業に対する取締りが不十分だったため、気候変動などの外的要因も伴って資源量の低下を招いてきた。

水産庁によると、絶滅危惧種となったニホンウナギや太平洋クロマグロはもとより、トラフグ、イカナゴ、ホッケ、キンメなど日本で漁獲されている水産物の約半数もの魚種の資源量が低水準に陥っている。その結果、漁業者は経営難に直面し、後継者不足や廃業など、水産業の縮小を招いてきた。

一方、EUや米国では、既に1980年代から水産資源の持続可能性に配慮した漁獲枠の設定及び漁獲規制を行ってきた。その結果、枯渇していた魚種も回復を見せ、漁業者が十分に利益を上げる好循環が築かれてきた。日本でも今回の管理漁業への転換により、大きな成果が期待できるにちがいない。
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文=井植美奈子

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