ペット医療に使われる医療機器も薬も、実はヒトと同じもの
グローバル市場でペットテック産業が成功するためには、「医療」が軸になると奥田氏。
実は、ペット医療は人間の後を追いかけており、医療機器も薬も人間と同じものを使っている。人間の子ども向けのサービスを、ペットに転用しているものもある。今でこそ医師と獣医師は分かれているが、昔は同じ医師だった。
同じ哺乳類なので人間もペットも同じ臓器を持ち、人間では珍しい病気が、動物では一般的であるケースもいくつかある。
今後、ペットテック産業が医療と連携するために、肝となるのがデータの収集だ。人間のデータは個人情報の点から厳しくなる一方、ペットは、法律上はよくも悪くも「もの」であるため、個人情報に該当しない。いずれペット側のソリューションが、人間にも応用できるようになるのではと。
「『zoobiquity(zoo(動物の)+ubiquity (遍在))』という造語があります。ペットは人間と同じ哺乳類なので、共通している部分が多く、医学連携によりペット側のデータが人間にも応用できるという考え方です。さらにペットゆえにデータ収集が容易ということも大きなメリットのひとつです。自分の子どもの顔をオンライン上にアップすることは躊躇しても、ペットは気にせずアップしています。それだけプライバシーに対する意識が異なるということです。
国連の人口予測によると、今後人口が100億人になっても、子どもは15〜20億人で現状と変わらないと言われています。一方でペットの数は増えるはずですから、ペットから収集可能なデータは膨大になり、そこから人間に応用できるソリューションもあるはずです。現在のペットテック製品でもデータを取るための機能を備えていますが、目的が明確ではないものがほとんどです。たとえばアルダでは、この治療のためにこういうデータを取る、と目的を明確にした上で、ペットテック製品で収集したデータを活用し、いかに産業に結びつけるかを考えています。こういう取り組みによってもペットテック市場は確実に拡大するはず、と考えています。
ペットと一緒にいると、PTSDやうつになりにくいというデータがあります。今後ペットが増えると人とペットはさらに密接になっていくと思われます。ペットのことだけを見るのではなく、ペットと人間の社会的共存によりペットが人間の産業を変え、問題を解決してくれるという視点に立つこと。そのためのペットテック製品であれば、ペットテック産業の未来は明るいと考えています」
奥田昌道◎A’alda Pte Ltd. Founder/CEO。シンガポールを拠点にアジア地域でアニマルヘルスケア事業を展開中。インドでは外資系企業初となる動物病院「DCC(Dogs Cats Companions)アニマルホスピタル」を運営する。テクノロジーを活用してペット業界の課題解決に取り組む。