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他方で、組織の問題の多くは、目に見えない“地中”から引き起こされる。深くに根を張っているのは、個人の内から湧き上がる「創造的衝動」である。何かを「つくりたい」という誰もが幼少期からもつ衝動がふさがされたままでは、組織の創造性は根本的に抑圧されてしまう。

個人の衝動が解放されれば、マネジャーやファシリテーターが適切な「問い」をデザインすることによって、チームの「創造的対話」と呼ばれるコミュニケーションが回り始める。

そもそも「対話」とは、意見の正しさを決める「討論」や合意形成や意思決定のための「議論」とは異なる。お互いの見えない前提を相互理解し合いながらも、事実に対する「意味づけ」を重ね合うようなコミュニケーションを指している。

その上で、新しい意味(アイデア)を生み出そうとする対話のことを、「創造的対話」と呼ぶ。日々の組織開発や事業開発は、掲げた「哲学」に合致していることも重要だが、チームの対話によって紡がれた「意味」に支えられていることが、何より重要である。

最後に、掲げている「哲学」が現場に浸透し、個人やチームに影響力をもっているかどうかも重要だ。優れた理念は、現場を刺激し、一人ひとりの衝動を覚醒させ、チームの創造的対話の基盤になる。日々交わされているコミュニケーションに、自然と「哲学」が反映されていれば、理想的だ。

そして、日々の現場の試行錯誤は、ときに既存の「哲学」に揺さぶりを与え、組織の新しい可能性を開くことがある。そのように、ボトムアップに組織の在り方が再解釈され、更新されていく風土があるかどうか。CCMの縦のラインの相互作用も、忘れてはならない。

近視眼的な二項対立を超えよう


CCMが示す通り、組織とは、有機的な生命システムである。そして組織を支援する方法論もまた、本来は全体論的なアプローチであるべきだ。しかしながら現代の組織論は、機械論的に分断され、各論として発展を遂げてきた。採用、育成、マーケティング、生産管理など、専門化が進み、書店のビジネス書棚は、局所的な処方箋にあふれている。

組織という複雑な生命システムを一面的に切り取ろうとすると、私たちは近視眼的な二項対立に狭窄されていく。昨今の議論の的である「デザイン思考か?アート思考か?」といった問いが、象徴的だ。

ヒト(衝動)に向き合うべきか、コト(哲学)を見据えるべきか。重視すべきは、ハコ(組織)か、モノ(事業)か。CCMは、このような安易な二元論に陥らないための態度の表明でもある。また、樹木はその断面を切り取ると、木が生きた証しである「年輪」が現れる。これはまさに、刻一刻と変わり続ける過程(変化)と、変わらない軸を残していくこと(安定)の葛藤を両立した象徴でもある。

人体が交感神経と副交感神経のバランスで成り立っているように、組織は常に、複雑な葛藤のなかで成り立っている。目先の課題解決のために、矛盾を解消しようとせず、高次に「止揚」させようとすること。そのためには、組織が生命としての主体を持ち、自分たちで考え続けなければならない。そのための行為こそが、CCMの中央に位置する「対話」にほかならないのである。

文=安斎勇樹(1、2ページ) 文=加藤藍子(3、4ページ) 写真=小田駿一

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