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2021.05.01

創業66年、カルト的人気の釣り具ブランド「がまかつ」が世界で愛される理由

カルト的人気の釣り具ブランド「がまかつ」は釣り人を歓喜させてきた(GAMAKATSU PTE LTD 提供)


顧客を歓喜させる──。あまり聞かないフレーズであるが、このラインに到達できれば、顧客は信者となるであろう。これはカルトブランドを目指す上でのヒントとなる。

先ほど「顧客の期待」と書いた。期待をいかに可視化するかはブランディングにおいて重要なポイントである。がまかつでは、ユーチューブにプロダクトの使用方法や、主催する大会の様子を投稿している。動画の数は取材時点で126本に上る。これをフェイスブックページ上で紹介するなどして、拡散させている。その結果、SNS上ではがまかつに関するコメントが蓄積されていき、プロダクト開発の際に参考となる。

オフラインでは、釣具店から寄せられる声を収集している。「釣具店は顧客の生の声が最も集まる場所」(村松氏)といい、がまかつが持つ釣具店とのネットワークは、重要な情報収集のプラットフォームだといえる。

時には釣具店のオリジナル商品を開発することもある。がまかつの営業担当者と釣具店が共同で商品棚のポップを作ることもある。ポップには「この港ならこの仕掛け」といった情報が書かれており、釣り場単位でおすすめの商品を設定する細やかさだ。

組織化されたコミュニティーメンバーは4000人超


ユーザーらによる「がまかつファングループ」(GFG)という、組織化されたコミュニティーがある。公式サイトによると全国11地区、合わせて4000人以上の会員を抱えるという。各地区で釣りイベントや競技会を主催するなど、活発に活動している。

がまかつは、会員証やグッズの製作、ウェブサイトの運営の手伝いという形でGFGの活動をサポートする。GFGを運営する役員はがまかつユーザーらで構成されており、会社として運営に関与しているわけではないが、「ユーザーに釣りを楽しんでもらうためにサポートしている」という。

がまかつは、「大切な部分は変えず、それ以外の部分では挑戦し続ける」という姿勢を貫いている。高品質なプロダクトを通して顧客を歓喜させることを大切にする一方で、社内では「変化に対応できる企業であろう」を合言葉にしている。商品開発において新素材を導入するなど、あくなき挑戦を続けている。

がまかつ清掃活動の様子
がまかつは水辺の清掃活動に精力的に取り組んでいる(GAMAKATSU PTE LTD 提供)

がまかつでは、水辺の清掃活動にも精力的に取り組んでいる。清掃イベントを主催することもある。動画撮影などの際も「来た時よりも美しく」を合言葉に毎回清掃している。

「地球上で環境破壊が広がる中、環境を守り持続可能な状態を作ることは釣り具メーカーの使命だ。それが最終的にはユーザーに長く釣りを楽しんでもらうことにもつながる」(村松氏)

創業者の愛を受け継ぐがまかつは、これからもユーザーを歓喜させるのだろう。

田中森士『カルトブランディング』書影
*本記事は、新著『カルトブランディング 顧客を熱狂させる技法』(祥伝社新書)から一部を抜粋。


田中森士◎クマベイス代表取締役CEO/B2Bコンテンツマーケティングコンサルタント/ライター。熊本市在住。熊本大学大学院で消費者行動を研究した後、熊本県立水俣高校で常勤講師として勤務。任期満了後、産経新聞社に入社。神戸総局、松山支局、大阪本社社会部を経て、2015年、コンテンツマーケティングの代理店・クマベイスを創業。主に中小のB2B企業を対象に、コンテンツマーケティングのコンサルティングや運用代行を行うほか、セミナーやワークショップ、講演活動にも積極的に取り組む。

文=田中森士

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