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2021.04.28

業界に新しい風を起こす医療AIベンチャー「アイリス」が描く医療の未来とは

新薬を一つ生み出すのに10年はかかると言われている医療の世界。医療機器の製造・販売を行うのにも、さまざまな許可や登録制度を必要とし、たとえ海外で製造された評価の高い医療機器を日本に輸入するとしても、いくつもの壁を乗り越えていかなくてはならない。一方で、地域格差などの問題も山積しており、イノベーションが必要とされている。

ニーズが深いだけに課題も多い医療業界に、AIを使って新たな進化を仕掛けているのが、医療AIベンチャーの「アイリス」だ。アイリスの代表であり、医師でもある沖山翔に、なぜ医療AIベンチャーを始めることになったのかを聞いた。そこには医師としての過去の苦しみ、そして、見据えている未来の医療への使命感があった。


競争から共創へ。人類の「共通資産」としての医療


「これまでは医師同士が技術で切磋琢磨するし、競い合うことでまた医療水準が発展する時代でしたが、それだけでは救えない患者さんがまだ大勢います」

救急医でもある沖山は、都内や離島などさまざまな病院で勤務した経験から、都市部と僻地の医療の違い、そして診療科ごとの医師の専門性の違いを目の当たりにし、日々葛藤を抱いていたという。

「僕自身の患者で、初めから心臓の専門医が診ていたら救えたかもしれない、という命がいくつもありました。他方では、その患者の病因が心臓にあるとは限らない。原因がわからないなかでは、救急医のように何でも広く診る医師が適切だというのは間違っていないはずだとは思うのですが……」

医師には、広く浅い「ジェネラリスト」と、狭く深い「スペシャリスト」がいると沖山は考えている。例えば最初の診察では多くの症例から的確な診断を下すジェネラリストが必要だが、手術になる場合は専門性の高いスペシャリストが必要となる。

長い修練の末にスペシャリストが身に付けたもののうち、知識はデータや論文などの形で後世に残され引き継がれる。しかし、見立てや判断基準といった経験は暗黙知であり、その医師がリタイアすると失われてしまう。アイリスは、この暗黙知をAIで再現することを目指している。

「長い年月におよぶ医師の努力は貴重です。専門分化が進み、全ての病気の最先端についていくのが難しいこの時代だからこそ、なおさら必要と言えるでしょう。それなのに、培われた経験が残されないというのは余りにもったいないし、患者や社会にとっての損失です。『医療技術』というものは本来、一医師の個人資産ではなく、人類でストックし、共有して活用すべき社会資産です。そこで、医師のもつ技術をクラウド上にAIで再現し、それを現場で活用すると同時に少しずつ育て合い、そしてまた発展した技術がシェアされるという医療の共創こそが、アイリスの目指している未来です」

ヒポクラテスの格言に"Art is long, life is short."(医術の道は長く、人生はかくも短い)とある。

熟練の技を修めるのには年月がかかる上に一代限り。この医療のジレンマを変えるため、それぞれの単語の頭文字をとって、「Aillis」と名付けたのが社名の由来である。



プロフェッショナルの知見を活かし、3年で開発・認可を目指す


AI医療機器により医療が発展する未来を描くことができても、それを即、医療現場に届けることは難しい。そこには国の認可など、さらなるハードルが待ち受けている。しかし、そこを最短の距離で進められるのがアイリスの強みだという。

アイリスには、社内に6名の医師が在籍しているほか、法律や規制に深い知見のある元官僚、医療機器の設計・開発を担うハードウェアエンジニア、AIを開発するデータサイエンティストなど、さまざまなバックグラウンドのメンバーがいる。課題抽出から機器・AI部分の開発、データ収集、法令への対応と、一気通貫で行うことができる。この強みを活かし、3年で一つの医療機器を形にしつつある。

「広義のヘルスケアという市場は少し盛り上がってきたように思いますが、医療の中心でイノベーションを起こそうとする人はまだ少ない印象です。医療の外の人から見ると、医療機器の開発・販売は面倒臭い、ルールだらけに見えるでしょう。でも、誰かが患者との診察や診断、治療といった医療の『一丁目一番地』をやらないといけない。私たちが価値提供できるところはここだと思っています」

AIが活躍するのは診断や治療の最中だけではない。診断・治療時にAIを活用することでデータが収集され、活用されればされるほど蓄積されるデータ量も増える。例えば、新型コロナウイルスやインフルエンザのような感染症の患者がどの地域にどれほどいるのか、といった分布データなどを元に、各市区町村や医師会と感染対策を立てたり、新薬開発に活かしたりすることができるかもしれない。アイリスが見通すのは医療現場の未来にとどまらない。

「診療データが個人のスマートフォンに保管され、個人カルテ(PHR: パーソナルヘルスレコード)化されれば、個人情報を匿名化したまま感染症の流行対策に使えるでしょう。また、アイリスが開発する医療機器が小型化され、家庭用血圧計のように一家に一台置かれる日が来るかもしれない。そうなれば、外出しなくてもデータを送信して遠隔診療で治療を受けられるようになります」

医療の現場は、病院の中だけでなく社会全体に広がっていく。そのためのIoT化・AI化・遠隔診療化と、アイリスが取り組まなければならない領域は無数にあると沖山は言う。

技術開発を終え、事業化フェーズへ。アイリスの描く共創する未来


2020年8月にスパークス・グループ、CYBERDYNEから資金調達を行うなど、過去3年間で累計調達金額が約30億円となったアイリス。開発済みの「インフルエンザ判定AI」だけでなく、次なる一手もすでに手がけているという。

「高血圧や動脈硬化を診断するAIや溶連菌の診断プログラムも開発中です。いまや、病院の医師もAIを意識していて、医師の数だけAI化のアイディアがある。そのなかで、これらが現在の技術で実現可能か、深いニーズがあるのか、そして、これは本当に自分たちがやるべきなのか。この見極めが大事です」

医療者と技術者が、互いの言葉を理解して侃々諤々の議論をしながら開発を行えるのがスタートアップの優位性だ。このアイリスの土壌から感染症判定AIが生みだされた。今度はこのAIを事業化し社会実装していく、次のスタートラインに立っている。そのために、会社としても事業、採用の両面で規模の拡大を行っていくという。

「僕自身の立場は会社経営者ではあるのですが、自分のやっていることは紛れもなく医療そのものだと思っています。自分自身、病院勤務時代から前職の医療スタートアップでの事業経験を経て、アイリスの起業に至りました。アイリスには過去の起業経験者が8人在籍していて、アイリスでの経験を経て独立起業したメンバーも既に2人います。それぞれが自分のやりたいことを見つけ、アイリスを通じて、あるいはそうでなくとも各自が自己実現していける組織でありたいと思っています。なぜなら、将来の起業家を排出するというのも社会を変えていく方法の一つだからです。そのような、将来の事業家・起業家を目指してアイリスにジョインしたメンバーも複数います」



最後に、アイリスの作る未来について尋ねてみると、

「ものづくりの会社というだけではなく、ものを通じて医療技術をみんなで共に作りあえるような社会の創り手になりたいです」という答えが返ってきた。

あるAIを現場で使えば使うほど、そのAIが成長していく。そして他のクリニックで、その成長したAIを使うことでさらに成長する。その成長したAIをみんなで分けあえる。患者はユーザーとしてではなく、データを提供することでAIを育てる側にもなり得る。つまり誰もが医療に関係し、そのすべてで医療が少しずつブラッシュアップされていく。結果、新しい薬や医療機器の開発、感染対策に繋がっていく。

「医療は医師が提供するもの、というのが当たり前だと思われがちですが、実は人類全員が医療を作っていく力を持っています。インフルエンザ判定AIの開発では1万人の方に協力をいただき、この全員でAIを作り上げたと言えます。患者さんにしてみれば、同意の上でデータを提供しているだけで、自分たちが医療を作っている自覚はあまりないかもしれない。でも、作り、みんなで医療を発展させているんです。しかもこれが100年先の医療に繋がるという遠い話ではなく、1年後2年後の医療にすぐ活きていきます。医療というのはみんなで作る時代で、社会全体で医療をより豊かにする時代に入ってきているのではないでしょうか」




左よりインフルエンザ判定AIの国内事業を手がける亀山、執行役員COOの田中、ハードウェア部門責任者の木野内

アイリスには沖山をはじめ、リクルート出身の田中大地や、金融系ITベンチャー出身の亀山紗穂など医療業界以外からも多彩な人材が集まっている。そのうちの一人がソニー出身の木野内敬(写真右端)だ。1995年にソニーに入社。15年間ウォークマンの商品企画を務め、企画統括時代には、Appleからシェアナンバーワンを勝ち取った、別名『ミスターウォークマン』。いわば00〜10年代のソニー内外で名を馳せた開発者が2020年9月より入社し、ハードウェア部門を担当している。

「彼の持っている『モノを形にする』ということへの、思想と解釈、経験と深みはこれまで人生で出会った方とはまた異質な次元のものでした。ユーザーのフィードバックを経て、マーケティングやプロモーションを含めて一気通貫でやっていくという部分は、木野内が入社したことによりアイリスのなかで更に強化されたと感じます」(沖山)

「AIの活用方法はさまざまですが、AI活用の本流は医療だと思ってきました。自分のものづくりの幅を広げたいという思いもありましたが、アイリスが作ろうとしている将来像が非常に面白かった。匠の技を届けたいという沖山の思いに共感できるところもあり、アイリスに参加しました。AIには人間の能力を補完、超越する部分があり、人間の目ではわからない部分を明らかにできる。アイリスは人生100年時代に役立つものが生み出せるのではないか、と思っています」(木野内)



沖山 翔◎代表取締役社長
2010年東京大学医学部卒業。日本赤十字社医療センター(救命救急)での勤務を経て、ドクターヘリ添乗医、災害派遣医療チームDMAT隊員として救急医療に従事。2015年 医療ベンチャー株式会社メドレー、執行役員として勤務。 2017年 アイリス株式会社 創業、代表取締役。

Promoted by アイリス / text by 石澤理香子 / photograph by 西川節子

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