──逆に、ファンの皆様を惹きつけ続ける工夫などがあればお聞かせください。
まずは個々人のクリエイティビティを大事にすること。会社として画一的な何かを指示してやらせるのではなく、いろんな個性を大切にしています。
その上で、完全にタレントさん任せになるのではなく、会社とタレントさんが二人三脚で成長しているのもホロライブならでは。例えばタレントさんのチャンネルとは別に、ホロライブ公式チャンネルでもショートアニメやミュージックビデオのような独自コンテンツを定期的に制作しています。
これらのコンテンツを制作するのは非常にお金のかかることなので、普通はやらないこと。でも他社はやらないことをやっているからこそ、ファンの方々に驚いていただけます。
会社主導でホロライブ全体を盛り上げる施策と、各タレントさんが個々人の個性を活かして配信を盛り上げる施策。この両輪があることによって、多くのファンの皆さんに楽しんでいただいているのかなと思います。
「攻め」と「守り」をバランスさせる
──急成長を支える組織作りにおいて、工夫されていることをお聞かせください。
創業当初はインターン生を中心に採用していきました。PMF(プロダクトマーケットフィット)するまでは創業メンバーとインターン生のみで、ミニマムな組織運営を心がけてきました。
そこからサービスがPMFし、ある程度成長が見え始めた段階でまずは責任者クラスの人材を採用していきました。そして次に、責任者たちの部下になるような人材を採用し始めたのが去年ごろです。
おかげさまでサービスが急成長するに伴い、組織も一気に100名規模まで拡大してきましたが、大きな組織崩壊無くここまで来られています。
最初から闇雲に人数を増やすのではなく、しっかりと事業と組織の基盤作りに集中することがポイントなのだと思います。
──責任者クラスの人材を口説く際に意識されているポイントがあればお聞かせください。
「全く新しい分野で挑戦できる」という部分をプレゼンテーションすることです。
まだ黎明期の市場でビジネスをしているからこそ、今後の結果次第で業界のキーパーソンになれる可能性がある。業界が大きくなった時に、すごくいいポジションになれるのは市場黎明期にチャレンジしているからこそです。
その可能性をしっかり見せることを大切にしています。
──他に後輩起業家たちが組織づくりで気をつけるべきポイントなどがあればお聞かせください。
スタートアップは往往にして管理部門を軽視してしまうと思います。会社を成長させる「攻め」の人材採用に集中しがちなのです。
ただ会社を成長させる上では「攻め」と「守り」のバランスが重要です。
事業が成長すればするほど、トラブル予防や対応も増えていきます。守りの人材採用をおろそかにしていると、場当たり的な対応に現場が終始してしまい、いつまでも根本的な改善策を打ち出せなくなります。
特に組織が30人を超えたあたりからはしっかり「攻め」と「守り」のバランスをとり、リスク管理も含めてクライアントや社会と向き合うことのできる組織にすることが重要なのかなと思います。