「あかり」だけじゃない イサム・ノグチの葛藤と芸術家人生の軌跡

「あかり」インスタレーション


日本で「石の声を聞く」


1964年、ノグチは香川県高松市牟礼町を訪れ、その後同地にアトリエと住居を構える。現在アトリエ跡はイサム・ノグチ庭園美術館として開館している。四季折々の自然を感じられる環境は、晩年さらに勢いを増したといわれる彼の創作活動にとって欠かせないものだった。

見る位置によって姿が変わる作品など、自然の摂理によって生み出される石の形そのままであるかのような、繊細なフォルムで掘り出されているのが晩年のノグチ作品の特徴だ。彼は自身の作品の「現代性」と「軽さ」を望み、金属板を用いた作品も多く手掛けた。

坐禅
イサム・ノグチ《坐禅》 1982-83年 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵 (c)2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ ARS, NY/ JASPAR, Tokyo E3713

柱
イサム・ノグチ《ねじれた柱》 1982-84年 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵(公益財団法人イサム・ノグチ日本財団に永久貸与)(c)2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ ARS, NY/ JASPAR, Tokyo E3713

「石の声を聞く」と言い、ノグチは手を加えつつ、石本来の要素を残すという類なき創作を行なった。

発見
イサム・ノグチ《発見の道》 1983-84年 鹿児島県霧島アートの森蔵 (c)2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ ARS, NY/ JASPAR, Tokyo E3713

無題
イサム・ノグチ《無題》 1987年 イサム・ノグチ財団・庭園美術館(ニューヨーク)蔵(公益財団法人イサム・ノグチ日本財団に永久貸与)(c)2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ ARS, NY/ JASPAR, Tokyo E3713

リスの耳と尾の形が丸みを帯びて特徴的なこの作品は、ノグチが亡くなる年に制作された。最晩年に取り組まれた本作は、すっきりとした印象だが愛らしさも感じられる。

risu
イサム・ノグチ《リス》 1988年 香川県立ミュージアム蔵 (c)2021 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ ARS, NY/ JASPAR, Tokyo E3713

ノグチは1988年、ニューヨークにて逝去。84歳の誕生日を祝ってから間もなくのことだった。同年は北海道の「モエレ沼公園」のマスタープランが完成した年でもあり、まだまだ彼の創作への熱が冷めていなかったことを感じさせる。創作意欲がそのまま反映された生命力溢れる彼の作品は、現代でも多くのファンから愛されている。

文=河村優 写真=苅部太郎

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事