カルト・ワインズは、これまで重視されていなかった北米のワイン投資家の獲得を早いうちから目指すワイン投資企業の一つだ。
同社の共同創業者、トム・ギアリング最高経営責任者(CEO)は「米国はオークションや収集家市場では重要な存在だが、ワイン投資市場としてはこれまで未開拓だった」と説明し、「ワインに投資するというアイデアや概念が、これまで欧州やアジアのように本格的に軌道に乗ったことは一度もない」と述べた。
カルト・ワインズの北米拠点の開設は、投資家がボルドーワインの2020年物を瓶詰め前に優先購入できるワインの先物取引「アン・プリムール」の開催時期と重なっている。
「アン・プリムールは通常、欧州の投資家からより注目を集めてきた。しかし当社では、カナダと米国での存在を確立するにつれ新たな投資家を獲得し、高級ワイン投資市場に参入するユニークな機会を投資家に提供することを見込んでいる」とギアリング。カルト・ワインズは、ボルドーのアン・プリムールの購入量が世界でも特に多い買い手の一つだ。
高級ワイン投資の分野を革新
トム・ギアリングとフィル・ギアリングがカルト・ワインズを設立したのは2007年のことだ。高級ワイン投資の仕組みを革新し、資産としてのワインをより手が届きやすいものにすることが目標だった。
北米へと拡大した同社は現在、3つの大陸にわたり約2億4000万ドル(約260億円)の資産を駆使していて、ロンドン、香港、シンガポール、上海での事業も成長を続けている。
カルト・ワインズでは高級ワインの世界的なポートフォリオに1万5000ドル(約160万円)から投資することができ、状況報告からポートフォリオのアクティブ運用までさまざまなサービスが受けられる。同社の4万5000ドル(約500万円)のポートフォリオは北米で今月提供開始され、入門レベルの1万5000ドルは7月にオープン予定だ。
カルト・ワインズは英国や欧州、アジアで強い存在感を築いているが、北米への拡大には新たな課題がいくつかある。
「ワイン投資の観点だけで見ると、北米での意識ははるかに低い」とギアリング。「北米のワイン市場の構造がこれを反映しており、米国では3層に分かれたアルコール流通システムや複雑な各州間の法律がある。複雑さとそれによる混乱が、免税のワイン投資に対する関心をこれまで阻んでいた要因なのではないか」
新型コロナウイルス感染症の流行により、酒をたしなむ人はインターネットを活用するようになり、ワイン界もそれに合わせてデジタルへと移行を続け、こうした障壁の多くが引き下げられた。