激変する書店 あるドキュメンタリー映画が映し出す「本の未来」


作中では、希少本蒐集の歴史などにも触れながら、20世紀を代表するブックセラーであるA.S.W.ローゼンバーグが、「若草物語」の著者であるルイーザ・メイ・オルコットが別名で書いたスリラー小説を発掘した話なども紹介される。

他にも本を愛してやまないニューヨークのブックセラーたちの物語も多数紹介されている。

アルバイトを募集していた書店に足を踏み入れたことから、ブックセラーの道を歩むことになったデイブは、大型本への偏愛が尽きない。彼が紹介する「マンモス探検」という本には、1万年5000年前のマンモスの毛が標本としてついている。

ジュディス、ナオミ、アディナの三姉妹は、1925年に父親が開業したアーゴシー書店を受け継ぎ、それぞれがアイデアを出し合いながら店を運営している。父親は娘たちに店を継げとは絶対に言わなかったという。それでも三姉妹が揃ってブックセラーとなっているのは、本に対する愛情ゆえであったにちがいない。

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若い世代のエリックとジェスは、靴屋だったスペースで書店を始める。「いまはインディペンデントな書店がブームで、僕らもそうだ。書店は地元の街と結びつき、住民が主体で、その要求に応える。チェーン店とは方向性が逆だ」とエリックは語る。彼の言葉は、そのままデジタル時代における書店の方向性を示しているとも言ってもいい。

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革製本の有名なディーラーであるビビは、高校を卒業して書店に就職したが、13年勤めて辞め、不用品売買を始めた。あるとき買い付けに行った家で、書棚に美しいバルザック全集が並んでいた。値段は全部で200ドル、「これは私が買う」とビビは叫んだという。その本との感動的な出合いが彼女をブックセラーへと導いたのだろう。
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文=稲垣伸寿

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