時代遅れの米インフラ、バイデンが目指す歴史的改革

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ジョー・バイデン米大統領は先月31日、ここ数十年で最も野心的なインフラ投資計画を発表した。米国を新たな技術的環境に適応させ、それが生む課題に対処することが狙いだ。

これは真に歴史的な節目だ。今回の計画の規模は、州間高速道路網や宇宙開発計画など、米経済の象徴的な柱を築いた1950~60年代の大型インフラ事業に匹敵する。ただ、計画は議会の承認待ちで、簡単に通過する見込みはない。

米国は過去40年にわたり、減税や規制緩和、社会保障の削減、金融政策の強い管理を基盤とした路線を取ってきたが、今回発表された約2兆ドル(約220兆円)規模のインフラ計画はそれと決別する新たな経済的アプローチであり、米国を根本から現代化させる巨大投資となる。その背景にあるのは、「インフラ」という言葉をより広い意味で捉え、こうした変革を実現するために必要な「人のインフラ」を含めるという考え方だ。

この新構想は「バイデノミクス」とも呼ばれ、道路や空港、公共交通機関、電気自動車(EV)、水道、インターネット、送電網、持続可能な住宅の改装・建設、教育といった従来型インフラから、高齢者や障害者のケア、研究開発、労働力の保持まで、あらゆるものを網羅している。

計画の中核にあるのは、クリーンエネルギーへの移行と、今後15年かけた化石燃料からの段階的脱却だ。設定された目標は野心的なもので、電力会社は風力・太陽光発電への移行に向けた細かい目標の達成が求められる。目標は徐々に引き上げられ、2035年までには再生可能エネルギーへの完全移行を目指す。これは米政府の電気事業への介入としては、近年で最大のものだ。

さらに、自動車の排ガス量目標値を、内燃エンジン車のほとんどが満たせないまで低く設定することで、大気汚染を引き起こす自動車の数を減らすことも目指している。そうなれば、こうした車は年々減っていくことだろう。

発電による温室効果ガス排出量の段階的削減に加え、大気中から二酸化炭素を抽出する方法も検討されている。バイデンはこうした取り組みを通じ、温室効果ガス削減だけでなく、電池やクリーンエネルギー、EVなどの技術でも世界をリードしようとしている。
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編集=遠藤宗生

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