ビジネス

2021.04.25

急成長中の組織は、さらなる成長を目指す

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、SmartHR 代表取締役の宮田昇始が「ブリッツスケーリング」を紹介する。


本書は、「ブリッツスケーリング」という企業の成長方法について解説している本です。

効率性、確実性をよしとする一般的な経営理論と違って、飛行機の胴体に翼を取り付けている最中にエンジンを始動し、同時に、通常の2、3倍の速度で飛べるアフターバーナーにも点火してしまうようなスピード最優先の戦略であるブリッツスケーリングは、リスクが高い半面、そのリスクを認識したうえで採用し、成功すれば、ライバルとはケタ違いの速度で成長できる、合理的で最適な戦略だとされています。

著者であり、起業家、投資家のリード・ホフマンが、共同創業者だったLinkedInをはじめ、Google、Amazon、Facebookなどの実例をあげて、その戦略を具体的に説明しています。

当社も創業からこれまで順調に事業を拡大してきました。もちろん、社内に課題がまったくなかったわけではありませんが、課題が大きくなる前に見つけて解消する作業を繰り返してきたことで、解決できないほどの大きな問題にならずにここまで来られたのだと思います。

ただ、なぜか私の頭の中には、何か落とし穴があるのではないか、いまの成功は氷山の一角であって、水面下にある目に見えない「将来の失敗」に気づけていないだけではないかという漠然とした警戒感が常にありました。当社が提供するSmartHRは、労務管理を効率化するクラウド型ソフトウェア分野で圧倒的なシェアを誇り、その機能性の高さから、どこにも負けない自信があるにもかかわらず、です。

「社内が安定し、急成長しているいまだからこそ、組織に多少の負荷がかかったとしても、一気に競合他社を引き離し、さらに差を広げておこう」

本書は、私を気づかせ、背中を押してくれました。もし、競合他社がブリッツスケーリングで仕掛けてきたとしても、我々が先に手を打ってさえいれば、追いつき、追い越されることはありません。また、本書を読んだ社員15人ほどでアイデアをもち寄り、プレゼンや議論を交わしました。その結果、いくつかのプロジェクトが走り始め、当社の次の成長エンジンになってくれることを期待しています。

ひとつの事業で、企業が永遠に伸び続けることはできません。経営者は次の成長へ、そして、その先の成長へとモチベーションを高く維持しながら、企業を導く役割を担っています。この役割は、とても難しく、私自身も苦労していますが、それでも「さらに伸びていく事業の先を見てみたい」という思いをエネルギーに、事業の成長についていける自分であり続けたいと思っています。


みやた・しょうじ◎1984年生まれ。専修大学卒業後、ウェブディレクターとしてキャリアをスタート。2013年にKUFU(現・SmartHR)を創業。社会保険や雇用保険、年末調整などの書類作成・申請を効率化できるクラウド型人事・労務ソフトを提供する。

構成=内田まさみ

この記事は 「Forbes JAPAN No.080 2021年4月号(2021/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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