2号ファンドの規模は1億5000万ドル(約160億円)で、アーリーステージのスタートアップを対象に、材料工学やエネルギー、クリーンテック、モビリティ、ロボティクスなどの分野に投資するという。
TDKベンチャーズは、2019年7月に5000万ドルの1号ファンドを設立しており、2号ファンドはその3倍の規模になる。1号ファンドでは、3DプリンタースタートアップのOrigin (今年初めにStratesys が買収)や、燃料電池スタートアップのGenCell(昨年11月にテルアビブ証券取引所に上場)など15社に出資している。
カリフォルニア州サンノゼに本拠を置くTDKベンチャーズは、今後3年間で50社に出資する予定だ。
「ニッチな市場をターゲットにし、我々にない技術を保有するスタートアップに投資をしていく」とTDKベンチャーズでマネージングディレクターを務めるNicolas Sauvageは話す。Sauvageはフランスのパリ出身で、現在はシリコンバレーに駐在している。
現在45歳のSauvageは、前職のスマートセンサースタートアップ「InvenSense」が2018年にTDKに買収されたことに伴い、同社に参画した。彼は夏の間受講したスタンフォード大学のエグゼクティブ・プログラムでCVCについて学び、VC業界のベテランであるPaul Hollandと出会った。Hollandは、インキュベーターのMach49で客員ベンチャーキャピタリストを務め、CVCに対してシリコンバレー流の投資術を助言している。
「私がスタンフォード大学で講義をしていたところ、Nicolasが“TDKベンチャーズを始めたい”と話しかけてきた」とHollandは述べた。当時、彼はNicolasの考えは実現困難だと思ったという。
それでもSauvageの決意は揺るがなかった。「TDKの社内でCVCの設立を何度も提案していたが、私は社歴が浅く、フランス人で日本語を話さない上、東京にいない」とSauvageは話す。9ヶ月間本社からノーと言われ続けた後、Sauvageは東京に飛び、取締役に直接プレゼンテーションを行ったところ、社長の石黒成直が立ち上がり、「これは、まさしく私が望んでいたことだ」と話したという。