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2021.04.28

「今こそ、金融・決済の遅れを一気に取り戻せ」──夏野 剛が語る理想的なプラットフォームとは?

ドワンゴ代表取締役社長CEO 夏野剛

事実、日本の金融・決済サービスは他の先進諸国と比べて遅れている。

しかし、デジタル給与のスタートが迫る今、大いなる転換点を迎えている。鍵を握るのはBIPROGYが立ち上げたプラットフォーム「doreca」。

連載「金融・決済サービスをシームレスに」の初回に登場するのはドワンゴ代表取締役社長CEOの夏野剛。過去からの金融・決済サービスの道のりを振り返り、現在の課題を浮き彫りにする。



「現金」が世界から姿を消しつつある──。

クレジットカード、デビットカード、そして今や電子マネーも登場し、選択肢も増えた。キャッシュレス決済なら財布不要、盗難防止など便利であることに加え、貨幣の製造や運搬など貨幣流通にかかるコストが削減できる。キャッシュレス化が進むことによるメリットは多大だ。

現在、日本のキャッシュレス決済率は20%ほどと世界水準からは大きく出遅れているが、ここには官民挙げて取り組んでいる。2025年の大阪・関西万博に向けて、80%という高水準比率を目指すという。我々はこの流れに乗れるのか。

日本のキャッシュレス決済サービスの現状と課題について、NTTドコモの「iモード」「おサイフケータイ」などのサービスを立ち上げ、現在はドワンゴで代表取締役社長を務める、夏野剛氏に語ってもらう。あわせて、その課題への解決策を提供する「doreca」サービスを、今年から開始するBIPROGYに今後の展望を聞いた。

決済サービスの歴史


普段、あまり意識することはないが、現金を流通させるには、貨幣の製造、偽札対策、運搬やATMの設置などコストがかかり、その額は年間5兆円とも8兆円とも言われる。地方の小さな町では現金しか使えない店も少なくないし、ちょっと前までは、「現金割引」と優遇されてもいた。日本はキャッシュレス先進国とは言い難い。

「でも、実は、日本ではかなり早い段階でクレジットカードが登場、普及していたんです。それにもかかわらず、日本はキャッシュレスに乗り遅れてしまっている。理由の一つは、クレジットカード会社が銀行の傘下にあるということと密接に関係しています」と夏野は言う。

1951年、百貨店中心の月賦販売を土台に、国内初の信販会社「日本信用販売会社」が設立され、60年代から「ショッピングクレジット」という販売店に対する立て替えシステムが始まった。

同じ頃、「日本ダイナースクラブ」が日本初の多目的クレジットカードを発行すると、翌年には三和銀行と日本信販の折半出資で日本クレジットビューロー(後のJCB)を設立。その後、ビジネス契機とみた各社が相次いで事業に参入し、割賦販売からクレジットカードでの決済へという流れが出来上がっていく。

日本は世界的に見ても、クレジットカードの発行枚数も多く所有率も高い。しかし、決済全体に占める割合が決して高くないのだ。

「ほとんどが銀行傘下であったゆえ、クレジットカード会社は手数料を安くするなど、リスクを取ってまでユーザーや加盟店を広げることに積極的ではありませんでした(夏野)。

クレジットカード決済加盟店になるには、決済端末の導入が必要。加えて、店舗の決済手数料が3〜6%ほどかかる。その双方の費用が高止まりし、かつ厳しい信用審査が必要だったこと、入金までに時間がかかること、対応に手間がかかることなどがネックになって、小売店の多数を占める単価が低い商店や、売り上げが多くない小規模店にはあまり広がらなかった。

公共料金や保険料などの支払いも、早い段階から金融機関からの自動引き落としにする流れが作られ、決済全体を銀行が担っている。日本の金融取引の主体となっているのが全銀システムであるのだ。

「そのため、新規参入が生まれず、キャッシュレス決済の効率化、サービスの向上が大きく遅れてしまった。国にとっても、消費者にとってもデメリットが多いと言えるでしょう」(夏野)。

電子マネーの登場


大きな転機となった契機の一つは、2000年前頃を境に、普及し始めたネットショッピングや携帯電話のデジタルコンテンツ商品の購入増だ。これらをきっかけに、クレジットカードの取引額は増加。現金決済から電子決済へと人々の意識も転換し始める。

「Eコマースにはクレジットカード決済を使わなければならないですから」(夏野)。

もう一つのターニングポイントが電子マネーの登場だ。携帯電話にアプリをダウンロードし、クレジットカードとの紐付けで利用するユーザーも多い。クレジットカードがなくても、前もってチャージすれば誰でもすぐに自由に使うことができるプリペイド式なら手軽な上、ついつい使いすぎることもない。

「セキュリティを懸念する人もいるけれど、システムリスクは変わりません。むしろ、オレオレ詐欺的な現金での受け渡しだと、後追いができない。クレジットカードや電子マネーでの交換であるならば、記録が残ります。防犯面でも有効です」(夏野)。

その後を追うように、2010年頃からは中国をはじめとする諸外国からのインバウンドが解禁される。これがキャッシュレス決済の大きな追い風となった。

「海外旅行者は現金なんて持ってきません。中国の方もほとんど電子マネーの『Alipay』。これはQRコードで誰でもできる仕組みです。『Alipay』に対応するなら、マルチの端末をどんどん作ろうと。これが、店舗に置く端末の価格を下げるソリューションとなった。小売店の対応が一気に進みましたね」(夏野)。

端末が安価なQRコード決済の電子マネーであれば、規模の小さい店でも十分対応できる。それに、QRコードはネット決済の便利さに加え、汎用性が高く、割引クーポンを追加することもできるし、紙媒体などのアナログメディアでも展開できる。機能は多岐にわたる。

このような経緯で、日本での電子マネー導入が始まると、「PayPay」や「LINE Pay」などが独自の展開をもたらし、ユーザーを着々と増やしていった。

電子マネーの課題とソリューション


しかし、安価で導入しやすく、使い勝手の良いはずの電子マネーはいくつかの課題をもたらした。一つは、多種多様な決済手段が登場したことによるサービスの乱立だ。選択肢が多すぎるがゆえ、店舗の対応コストも増し、ユーザーからしても不便な状態になっている。

これが「日本のキャッシュレス決済の遅延のもう一つの原因になっているのだ」と、夏野氏は言う。

「店によって導入している決済手段は様々で、『これさえあれば、どこのお店でも使える』という状況になっていません。結局、ユーザーはいくつかの決済アプリを入手して、それぞれにチャージすることになる」(夏野)。

確かに、店舗によって使える決済アプリが異なったり、アプリによって種々のキャッシュバックキャンペーンがあったりするため、使い分けをするユーザーも多い。チャージも一手間だ。

「それと、それぞれのアプリに少しずつ残高があるという、ユーザーからするともったいない状況もあります。端末を移行して自動的に引き継がれるものもあるけれど、事前に申請が必要なものもある。これらは普及の障害となる可能性があります」(夏野)。

こういったサービス乱立による課題を解決するプラットフォームが誕生しようとしている。BIPROGYが手がける「doreca」だ。

■価値交換基盤「doreca」


「doreca」のメイン事業は2つ。1つ目は個人の電子マネーアカウントに給与やバイト代、保険金などをオンラインチャージする仕組み「ダイレクトオンラインチャージ」だ。

「これを使えば、ユーザーはチャージの手間が省ける上、支払い側は全銀システムを使わないので大きな資金取引コスト減となります。その分、人々に還元されるようになるのではというのが、我々の期待です」(BIPROGY)。

「給与なら、一斉に月1回決まった日にちの支払いではなく、働いた分だけすぐに支払うといことが可能になります。受け取る側も現金を引き出す手間がなくなる上、短期の期間限定で働く人や、銀行口座が作りにくい外国人労働者など、ユーザー側はニーズも大きいはず」(夏野)。


オンラインで対話する夏野 剛とBIPROGY(写真手前)

2つ目は、個人が所有するデジタルマネーバリュー(残高)を相互交換する「デジタルマネーのバリュー交換」。

「例えば、A決済会社のアカウントに残っている残高を、B社のアカウントに移行する。残高連携が可能になることで、支払いの際に残高不足で困るということがなくなります」(BIPROGY)。

「僕自身、一つの端末にいろいろ残金が滞留している。サービスを登場させるには良いタイミングだと思います。『doreca』のようなプラットフォームが厳然として出てくれば、決済事業社も乗ってくるはず。「システムがないからやらない」という理屈が通らなくなりますから」(夏野)。

「doreca」の事業は遅々とした日本のキャッシュレス化に風穴を開けることになるかもしれない。

「doreca」は電子マネーの交換の利便性を高めるプラットフォーム。しかし、本質的に見れば、金融デジタル化によるポテンシャルを高めるものだ。

「国民への給付金や還付金など、消費を促進するための補助金、今は銀行口座に入金されているが、これを『doreca』のサービスを使って電子マネーで払うようにすることも考えられます。この効果は大きい。貯蓄ではなく消費へ動く」(夏野)。

「電子マネーで交換されている限り、誰が、いつ、どこで交換したかという使途の記録が取れるので、マーケティングにも有効。政策効果も把握できます。もちろんオレオレ詐欺のような犯罪予防にも効果的です」(BIPROGY)。

テクノロジーでユーザビリティ欠如の現状をはじめ、経済、社会、そして個人の課題を解決していくことが「doreca」の狙いであり大義。「doreca」が社会にもたらす変化の可能性はまだまだ広がりそうだ。

「Eコマースも最初は不安や抵抗を示す人も多かった。でも今ではごく当たり前なこととして定着しています。安全で合理的なものであれば、必ず受け入れられ普及していくと確信しています」(BIPROGY)。

お父さんの小遣いが電子マネーになる。結婚のご祝儀やお祝い金もアカウントにチャージ。お年玉すら、おじいちゃんが孫のスマホにチャージする、そんな時代が現実的になりつつある。

「世の中は大きく変わると思います」(夏野)。


写真左からBIPROGYの向井剛志、北村哲史、石井佑介

doreca公式HPはこちら

日本の金融・決済サービスの過去から未来を考える連載「金融・決済サービスをシームレスに」はこちらから



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