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2021.04.24 20:00

「一流」を身に着け、ビジネスに生かす

千野和俊 ウェルス・マネジメント代表取締役社長

千野和俊 ウェルス・マネジメント代表取締役社長

三菱地所投資顧問の設立メンバー、取締役を経て、2006年に起業。現在、ホテルを主軸とした投資・開発に奔走する千野和俊。若き日の背伸びの必要性や、好きだという京都の魅力を聞いた。


ウェルス・マネジメントは、主に不動産金融を営む「リシェス・マネジメント」とホテル運営事業を行う「ホテルWマネジメント」という、中核子会社2社とともに業務を展開しているグループ企業です。ホテルマネジメントとしては、現在関西地区を中心にホテル4棟を運営し、うち2軒は京都のラグジュアリーホテルであり、3月16日には日本初の「フォションホテル京都」も開業。

プレミアム〜ラグジュアリータイプのホテルは、アフターコロナ期のインバウンド需要のみならず、現在のウィズコロナ期においても海外旅行に行けない国内富裕層の需要を取り込めると確信しています。

快適な時間と空間づくりを通して、日本の魅力と文化を「体験価値」として提供し、あらゆるお客様に感動と安定的な繁栄をお届けする──これはわが社の企業理念ですが、同時に私個人も一流の品々、空間、人々から、かけがえのないものを受け取り、学ばせてもらいました。

そんな最初の品は、GUCCIのダブルGのベルトです(笑)。大阪の私立高校に通っていたとき、クラスメイトは商売人の息子ばかりで、身に着けているものがどれも高級品。彼らと同じものを身に着けたいと発奮した私は、新聞配達を数カ月続けて、ベルトを購入しました。当時1万5000円、いまだと6万円くらいでしょうか。欲しかったら諦めないこと、そして自ら働いて手に入れる喜びを、そのとき学びました。

もうひとつ頑張って手に入れたのは、20代前半にがむしゃらに働いてお金を貯め、それでも足りずに借金して買った中古のポルシェです。「地位は人を育てる」とはよく言いますが、一流の品を身に着けると、「それにふさわしい人でありたい」という気持ちが醸成される。海外旅行とか星付きレストランでの食事など、やはり“若いときの背伸び”は大事な経験ではないでしょうか。

私たちがつくっているホテルは、エクスクルーシブ・ラグジュアリーです。世界の富裕層に支持される空間をデザインしなければいけないわけですから、若いころからの背伸び─例えば海外のホテルや建築物、美術品や工芸品などを見て学んだことが非常に役に立ちました。すると不思議なもので、逆に海外からのお客様に「日本」を正しく伝えたくなり、次は日本の歴史本を読みあさるようになりました。

特に好きで読んだのは司馬遼太郎です。『世に棲む日日』で描かれている吉田松陰と高杉晋作、『翔ぶが如く』で描かれている西郷隆盛は、日本の近代の礎をつくった3人。彼らの生き様は自らの生き方の参考にしています。

同時に、彼らの生きた時代背景を学び直していると、関連する寺社仏閣を訪ねたくなる。それであちこち回っているうちに、「京都」にも魅入られました。例えば私たちの手がけた「京都悠洛(ゆら)ホテル二条城別邸Mギャラリー」のロビーから望む箱庭は、紅葉と苔(こけ)で構成された京都・祇王寺の庭にインスパイアされ、設計しました。

もともとの興味を深掘りしていった結果、ビジネスにも結びついて花開くということが往々にあります。ぜひ自らの興味を見つめ直し、深掘りを続けてみてください。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

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