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2021.04.22

中国スポーツ衣料大手ANTAの経営陣が持ち株売却、五輪中止を懸念か

Costfoto/Barcroft Media via Getty Images

ほんの数年前まで、中国のスポーツウェア業界にとって2021年と2022年は、特に有望な年になると思われていた。日本で開催予定の2021年の夏季オリンピックは中国人たちを熱狂させ、北京で開催予定の2022年の冬季オリンピックも、ウィンタースポーツへの関心を高めるはずだった。

しかし、日本での大会の中止や、来年の北京大会のボイコットが懸念される中、中国最大のスポーツウェア企業の経営陣が4月20日、持ち株の売却を発表した。

中国最大のスポーツウェアメーカーでANTAのブランド名で知られる「アンタスポーツ(安踏体育)」を運営するAnta InternationalのDing Shizhong会長とDing Shijia副会長は20日、香港に上場する同社の株式8800万株(約3.3%)を1株131.48香港ドルで売却し、約15億ドル(約1620億円)を得ると発表した。アンタ株の20日の終値は142.20香港ドルであり、彼らはその価格を7.5%下回る価格で売却したことになる。

これを受けてアンタスポーツの株価は21日午前の市場で7.2%安の約131香港ドルに下落し、過去約1年で最大の下げ幅を記録した。ビリオネア兄弟のShizhong会長とShijia副会長は、売却の理由を明らかにしていない。

中国経済がパンデミックから回復したことで、アンタの株価は過去1年間で80%近く上昇していた。さらに、同社の競合の中国の国産スポーツブランドのXtep(特歩)やLI-NING(李寧)、361degrees(361度国際)などの株価も先月、米国のナイキが新疆ウイグル自治区の問題に懸念を表明し反発を浴びたことを受けて急騰していた。

2022年の北京冬季五輪のスポンサーであるアンタは、2019年にフィンランドの「アメアスポーツ」を約50億ドルで買収していた。アメア傘下には、スキー用品のAtomicやSalomon、テニスラケットのWilsonなどがある。アンタはアメアスポーツの買収にあたり、テンセントやFountainVest Partners、ヨガファッションのLululemon(ルルレモン)の創業者のチップ・ウィルソンから出資を受けていた。

アンタはフィラ(FILA)などのブランドの中国での販売権も保有し、NBAのゴールデンステート・ウォリアーズ所属のクレイ・トンプソンらの有名選手と長年、エンドースメント契約も結び、国内のプロモーション活動に活かしている。1991年設立の同社は、2007年に香港市場で上場を果たしていた。

現在、フォーブスのリアルタイム・ビリオネア・ランキングで、Shizhong会長の保有資産は110億ドル、弟のShijia副会長の保有資産は108億ドルとされている。

編集=上田裕資

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