SKグループは4月6日、ベトナムの流通最大手の「ビンコマース(VinCommerce)」に4億1000万ドル(約450億円)を出資し、同社株の16.3%を取得したと発表した。SKはこの株式を、同社のパートナーで、ビンコマースの支配株を握る現地の財閥のマサングループから購入した。SKグループは2018年からマサンの9.5%の株式を保有していた。
「当社は、経済の拡大が続く東南アジアに強い機会を見出しており、ベトナム市場には数年前から積極的な投資を行ってきた」とSKグループの広報担当は述べた。
ベトナム経済は、パンデミックによる減速にもかかわらず、2020年に2.9%の成長を記録しており、国際通貨基金は「強い経済のファンダメンタルズ」を背景に、今年はさらに6.5%の拡大を予想している。9650万人の人口を抱えるベトナムでは、過去10年間、小売業の成長が続いている。
ベトナムの小売市場の半分以上を占めるビンコマースは、国内で2300店舗のコンビニやスーパーマーケットを運営しており、SKグループの広報は「今回の出資は、当社にユニークな機会をもたらす」と述べた。
SKグループは、ビンコマースが将来的にアリババやアマゾンのようなオンラインとオフラインを組み合わせたオムニチャネル事業者に成長すると予想している。
SKグループは2018年に東南アジア投資部門を設立し、6億5500万人の人口を抱える東南アジア地域での成長機会を模索している。同社は、ベトナム最大のコングロマリットであるビングループ(Vingroup)の6.1%の株式を保有しており、子会社のSK EnergyはPetroVietnam Oilの株式を5.23%保有している。さらにSKグループは昨年、ベトナムの製薬会社イメックスファームの株式24.9%を取得した。
サムスンも東南アジアに注力
「韓国の財閥が東南アジアへの投資を急ぐのは、国内市場の規模が比較的限られているからだ」と、ワシントン本拠の調査企業FiscalNoteは述べている。サムスンも2019年、3回目となる同社の電子機器関連の見本市「サムスン・ショーケース」をベトナムで開催した。
韓国企業は、文在寅大統領が提唱する「新南方政策」(東南アジア諸国との関係を深め、中国や米国への依存度を下げる計画)のもと、東南アジアへの進出を加速させている。韓国の対ベトナム投資額は、2019年時点で世界5位だった。
調査会社IHS Markitのラジブ・ビスワスは、「韓国経済が高齢化によって、長期的な個人消費の伸び悩みに直面する中で、SKグループはベトナムへの投資でさらなる成長を模索している」と述べた。
マサングループのグエン・ダン・クアン会長の保有資産をフォーブスは、12億ドルと試算している。マサングループは、動物飼料から食品加工に至るまで幅広い事業を行い、売上高は17億ドルとされている。