今年のヘルスケア&サイエンス部門の注目起業家には、がんの早期発見を目指す日本のスタートアップ「Craif」の代表取締役の小野瀬隆一(29)が選出された。
小野瀬が起業したのは、個人的な理由からだった。祖父ががんと診断されたとき、小野瀬はセカンドオピニオンを求めて奔走した。三菱商事の社員だった小野瀬は、より良い方法、特に治療に関する別の見解があるはずだと考え、日本の投資ファンドANRIにアプローチし、名古屋大学のバイオエンジニアの安井隆雄を紹介された。二人は2018年にCraifを設立し、がんの早期発見に注力している。
東京に拠点を置くCraifは、独自のデバイスで採取した尿サンプルをAIで分析し、肺や卵巣などのがん検査を行う。「尿はがん検査に使えないと誰もが言うなかで、これはチャンスだと考えた」と小野瀬は言う。差別化のポイントは、同業他社よりも多くのバイオマーカーデータを抽出できることだと、彼は述べている。
Craifは、これまで750万ドル(約8億1000万円)の資金を調達し、来年には検査サービスの開始を目指している。最終的には、検査対象とする病気の種類を増やすと同時に、最適な治療法を提供し、日本や海外での展開を目指している。
今年の30アンダー30アジアのヘルスケア部門では、ほかにもオンライン薬局や医療デバイス、AIを使った代替医療サービスなどの分野から、様々な若い起業家が選出された。
その一つに挙げられるのが、Chen Chee Yangが設立したCarta Genomics社だ。今から29年前に体外受精(IVF)で生まれた神経科学者のChenは、2018年に同社を設立した。シンガポールを拠点とする同社は、AIと機械学習を用いて、複数の遺伝子が連携して働く様子を分析し、将来の各胚の病気のリスクを予測し、親たちの決断を助けている。