本稿では、最近軽井沢に移住・二拠点居住された新しいライフスタイル、価値観を持った方々に加え、その移住者を受け入れる立場の企業・団体・自治体のトップの方々にインタビューし、地域活性化、将来のリゾートテレワーク・ワーケーションの可能性を予見していく。
今回は、大軽井沢経済圏※1の一翼を担う小諸市の小泉俊博市長に、インタビューする。
※1 軽井沢と、周辺エリアの御代田町・小諸市・佐久市・東御市・上田市、本稿ではこのエリアを大軽井沢経済圏と呼ぶ
小諸でウイスキー生産へ
鈴木幹一(以下鈴木):小諸は、歴史溢れる高原城下町として魅力はたくさんあると思います。今回はその中でも最近特に話題のウイスキー蒸留所のお話を中心に、酒類クラスターのお話をお聞かせいただきたいと思います。
小泉俊博(以下小泉):まず、シングルモルトウイスキー蒸留所についてお話しします。蒸留所建設予定地は、浅間サンライン沿いにあり、標高は910メートル、敷地面積は1万平方メートル以上です。蒸留所とショップやバーなどを備えた施設とウイスキー貯蔵所2棟を今年度から建設します。単一蒸留所の原酒のみで造り、こだわりがストレートに反映される「シングルモルトウイスキー」として販売していく計画です。
マスターブレンダーのイアン・チャン氏は、昨年3月まで在籍していた台湾のカバランをわずか十数年で世界に知られる蒸留所にした張本人で、世界トップクラスのウイスキーを目指し「リッチでフルーティー、複雑なのにクリーン」なフレーバーが特徴です。
この地を選んだ理由として、小諸の気候風土が世界最高のウイスキー醸造に適しているからと聞いています。また、イアン・チャン氏の影響もあり、既に「KOMORO」の名は世界から注目されているそうです。
標高2000メートルの高峰高原から見る雲海(小諸市小泉俊博市長撮影)。高峰高原は、国内有数の星空観察スポットとしても有名。
鈴木:最近日本ではシングルモルトウイスキーブームですから、今からとても楽しみですね。具体的なスケジュールと規模感はどんな感じでしょうか?
小泉:来年春に竣工予定で、年間10万リットル(原酒)程度から始め、徐々に生産量を増やしていく予定です。ショップやバーのほかウイスキーを本格的に学べるアカデミー(エディ・ラドロー氏が担当)も開き、国内のウイスキーファンや欧米や台湾などから年間10万人の来客を目指しています。
鈴木:ウイスキーの蒸留所は南軽井沢にも予定されています。そうなると大軽井沢経済圏で2つのウイスキー蒸留所が出来ることになります。今までのワイン、日本酒の酒蔵、ビール、焼酎に加えウイスキーが加わることによりエリア全体で大きな集客力が期待できると思います。具体的にどのような誘客をお考えでしょうか?
軽井沢蒸留酒製造株式会社 副社長張郁嵐(イアン・チャン)氏。2005年、台湾初のウイスキーメーカー「カヴァラン」(KAVALAN)の立ち上げメンバー。最も権威ある賞を複数回にわたり受賞。現在、世界のウイスキー品評会(IWSC)の審議員としても活動している。
小泉:首都圏や北陸方面から、お酒好きな方々をターゲットにした酒類ツーリズムを定着させることで来訪者の増加が期待できると思っています。また、最近エリア内に人気のレストランが増えてきていますので、酒類と美食を合わせたツアーも良いと思います。
長野県は味噌・漬物など発酵食品文化が歴史的にも定着しております。長野県全体でも発酵と健康長寿で強力に推進していますので、酒類と美食に加え、健康を組み合わせたガストロノミーツアーも魅力的なコンテンツだと思います。