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2021.04.20

最終的な成果や結果よりも、プロセス自体の価値が向上?

boonchoke / Shutterstock.com

資本主義の限界はずっと昔から言われ続けてきたことですが、本当の限界が概念だけでなくて「本当に実体験を伴って見えている」のがいま生きている世代だと感じています。最近では、新型コロナによる影響やアメリカの社会情勢などの矛盾が顕著になって、いわゆる世界の成功モデルとしての米国に希望を見出すのは難しい。何か別のかたちの希望が求められているのではないでしょうか。

例えば日本のスタートアップ市場でも、GAFAや中国企業に拮抗することが目標に掲げられることがありますが、規模の観点からはすでに非現実的です。また、私たちが目指すべき世界観は本当にGAFAのような経済的な成長企業の先にあるのでしょうか?

私がプロジェクトリーダーを務める、新しい資源循環の仕組みづくりを研究開発するシードアクセラレータープログラム「ハルキゲニアラボ」は、そういったものに対するアンチテーゼというか、本来、私たちが選ぶべき未来のあり方を模索しています。これは、経済性をインセンティブに動かしていく仕組みには限界がありますが、経済性以外の別のインセンティブ、つまり「価値」が何なのかというのを明らかにしていくという試みです。

採択したのは「巻組」「ココホレジャパン」「Next Commons Lab」「UCHC」の4団体です。考えたのは、「社会的にいい意味でのインパクト」があるかどうか、です。そのインパクトが何で、どれほどの影響を生み出していくのかを測る予定ですが、それだけではありません。

例えばまったく新しい、そもそもまだインパクトだと思われていなかったことをインパクトだというふうに定義づけていったり、それをどういう尺度で明らかにし可視化したりして測っていくのか。それ自体が新しい方法を生み出す必要がります。インパクトの定義の拡張や評価の方法論も一緒に考えながら、進めていかなくてはならない。

新しい経済をどう測るのか?


社会の課題解決に新しい経済で挑む手法としては、行政から民間事業者に委託する事業に対し、社会的な成果に応じて支払いをする契約を結ぶPFS(成果連動型民間委託)や、その際に投資家から資金調達を行う手法SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)などで大型の資金が動いています。

一方で、ハルキゲニアの取り組みは、オカネ以外の価値交換が支える「新しい経済」、つまり、経済資本主義では価値化されにくい社会資本、自然資本、文化資本、人的資本、感情資本等を価値化する事業モデルや仕組みづくりで、少額の資金で動いています。
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文=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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