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2021.04.26

U-NEXTのHBO Max独占契約は、配信プラットフォームの差別化となるか

HBOとの提携を発表したU-NEXTは業績好調をブーストする取り組みだと強調する。


同社はあたかもデジタルマーケティング企業のような発想で作品と利用者をつなげてきた。そして、堤の「250万人、300万人は見えてきている」の言葉を後押しするのが、今回のHBO、HBO Maxの独占だろう。

「ここでしか観られない、という『ONLY ON』戦略を宣言しています。この提携で利用者さんのマインドシェアがさらに高まると考えています」

HBO独占契約の果たす役割


次の成長ステージに入ったという堤は、ワーナーとの提携、HBO、HBO Maxの独占配信に期待を寄せる。

「HBOは作品性が高いものばかりです。U-NEXTユーザーの嗜好は多様で、ある配信サービスが人気だからといってそれに乗って加入するタイプではなく、わざわざここを選んで入会してくださっている方が多い。『私の嗜好に合っている』と思ってもらえるメニューがあり、その多様さを理解いただいているのです。そういった方々にクオリティの高いHBOの作品が加わることで親和性がより高まります」

HBOの作品はロングテールな〈セックス・アンド・ザ・シティ〉やファン層の厚い〈ゲーム・オブ・スローンズ〉、エミー賞の〈ウォッチメン〉など、多彩さとコアな人気の作品が多い。

「一定のクラスターと言いますか、コンテンツに対して自分なりの基準を持っている方には絶大なパワーがあるでしょう。その作品群は、見ればわかるクオリティと表現したい。今回の提携は、サービス(作品)の品揃えを増やしていくことと、U-NEXTのユーザーの好みが最大限マッチすると考えています」

巨人への対抗策はオリジナルか


配信サービス各社の現状は、生き馬の目を抜くコンテンツ陣取り合戦といった様相を呈している。今のU-NEXTは、勢いを増す「巨人」たちに切れ味鋭い日本刀で立ち向かうという構図であり、業績と会員数を伸ばしているとはいえ安心できる状況ではない。HBOの作品群は、独占契約の効果でU-NEXTの成長をブーストするのは間違いないだろうし、同社のリテールマーケティングでユーザー満足度を上げながら会員が増えるのも想像がつく。しかし、その先はどうか。

「巨人Netflixの動きは業界を大きく変えましたが、各国で制作や配信を行うその動きを1社が単独で真似ても意味はなく、彼らの動きに対するリアクションとして、今、コンテンツメーカーのHBOと我々が手を組むような形で、ユーザーの満足度に寄与するという構図ができています。我々配信プラットフォームは、コンテンツメーカーとともに世界戦略の中で動いているのです。Netflixのように自らがコンテンツプラットフォームとなって日本や世界に進出するか、我々のように独占契約などライセンスタイプでいくのか、これは世界で起きている大きな動きです」

そこで重要になるのは、差別化としての「オリジナル番組」ではないだろうか。HBOというコンテンツメーカーの持つ作品性の高いラインナップは十分に差別化の力を持つが、世界に公開される映画とは違う、HBOでしか観られないオリジナル作品が強力なパワーを持つからだ。

レイドバイウルブスの画面写真

タイガーウッズの番組写真
リドリースコットによるHBO Maxオリジナルの話題作「レイド・バイ・ウルブス / 神なき惑星」(上)/ タイガー・ウッズの過去から現在までのドキュメンタリー「タイガーウッズ / 光と影」(下)。HBOでは多くのオリジナルコンテンツをすでに用意している。

「オリジナルというフィールドはかなり広く、現在、最も成功しているのはNetflixさんの韓国ドラマでしょう。U-NEXTで視聴できるHBOにも多数オリジナル番組が用意されていて、視聴者の期待が集まります。また、クロスボーダーと呼ばれる仕組みもこれから可能性があります。コンテンツ制作者が海外配信の前提で配給や役者を国際的な枠組みで作る仕組みです。オリジナル番組としての他社との差別化もでき、配信側としては魅力あるコンテンツとなるでしょう」

現時点ではクロスボーダーの作品が数多く登場するという状況にはないというが、配信プラットフォームを選択するということは、こうした「ここでしか観られない」オリジナルという番組の存在が、強力な差別化になっていくのではないか。

文=坂元耕二 写真=西川節子(人物)

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