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旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」


一方、インテリアと空間デザインは、地元コペンハーゲンのブティック型デザイン・建築事務所、スペーコン&X(Spacon & X)が担当。同社は、前述のパン店の内装も担当しており、イケアのイノヴェーションラボ「SPACE10」のデザインも行った。レゼピは、過去にSpacon & Xが手がけたラーメンショップのデザインが気に入っていたようだ。

POPLの店は、Hart Bageriの隣。そこは、コロナの影響で閉店せざるを得なくなってしまったノーマの姉妹店「108」があった場所だ。旧店舗のコンクリートの柱やレンガの壁といったインダストリアル的な雰囲気はそのままに残し、(Izakayaとして海外でも知られているような)モダンな居酒屋や、アメリカのダイナーのようなフレンドリーな空間がコンセプトになっている。


(photo:holmris-B8)

自然のぬくもりが感じられるテーブルと椅子は、フランクフルトの家具ブランド「E15」とのコラボレーションで実現した。照明は、地元デザイナーによるもので、海藻素材が使われている。POPLは、今年のウォールペーパー・デザイン・アワードで「ベスト・バーガー・バー」を受賞した。

ノーマのベテランスタッフが手がけたバーガーは、デンマーク産のオーガニックビーフを使用。デンマークの西海岸にある畜産農家から仕入れられたフリー・レンジ(放し飼い)の牛肉だ。ベジタリアン、ビーガンのためのバーガー・パティは、ノーマの発酵ラボにて特別に開発されたもので、発酵キヌアが使われている。地元素材とフード・サプライチェーンへのこだわりは、ノーマ系列のレストランの根幹にあるものだ。


ベジタリアンバーガー(photo:Ditte Isager)

ハンバーガーの価格は、チーズバーガー、ベジタリアン、ビーガンとそれぞれ115クローネ(約2000円)。日によっては、フライドチキンサンドやフィッシュバーガーも登場するようだ。サイドメニュー、ビールやワイン、ソフトドリンクなどもあるが、基本的にはシンプルなメニュー展開。オンラインで事前に注文し、店舗で受け取ることも可能だ。現在の営業日は水曜日から日曜日までの週5日。正午開店で、売切れるとともに閉店する。

ノーマのオーナー、レゼピは、2003年にノーマを開業して以来、スクラップ・ビルドで時代に合わせた新しい挑戦をしかけてきた起業家でもある。もともとのノーマは一度閉店させ、2018年に現在の場所に新しいかたちで「ノーマ2.0」を開店させた。

レゼピはパートナーとして事業参画したBarr、108以外に、Sanchez、Amass、Hart Bageri、東京のInuaといった、ほかの飲食事業にも出資。Hart Bageri以外はノーマの卒業生が手がけている。108、Inuaはコロナの影響で閉店を余儀なくされたが、AmassはPOPLのように手軽でカジュアルな新形態をオープンさせるなど、事業環境に応じた戦略修正を行っている。

レゼピは、過去のインタビューで、ノーマは、「人々が、あるその瞬間(the moment)を体験する場所」であると語っている。先行きが不安定な状況だからこそ、人々はいまこの瞬間に必要な体験を求めている。POPLは、人々が潜在的に欲している「元気を取り戻せる体験」というニーズにぴったりとはまった、これからのビジネスモデルの一つかもしれない。

連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA

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