レティグによると、IRSの直近の推定は2011〜13年を対象としたもので年4410億ドルの差額があると見積もっていた。当時は2兆ドル規模の暗号資産(仮想通貨)市場が台頭する前で、金額にはジョー・バイデン現政権が財源として注目している国外源泉所得や、理論的には課税可能な違法収入も含まれていない。
全米経済研究所(NBER)は最近、米国のタックスギャップは2020年から2029年までの合計で7兆5000億ドルに達するとの見通しを示しているが、レティグが新たに示した1兆ドル超という額はそれを上回る大きさになる。
レティグは、税務執行のために追加で数十億ドル規模の予算が確保されれば、IRSは職員を4875人雇え、タックスギャップを「大幅に縮小」できるだろうとも述べた。レティグは先月、IRSの予算が1ドル増えれば税収は5〜7ドル増えるとの試算も明らかにしている。
バイデンも手をこまねいているわけではなく、これまでにIRS向けに12億ドルの追加予算を提案している。民主党の下院議員らも今月、財務省と行政管理予算局(OMB)に宛てた書簡で、IRSのリソース不足によって既存の税源が手つかずになっていると述べ、増税の検討よりもまずこの問題に対処すべきだと訴えた。
最近の研究によれば、上位1%の納税者はパススルーやオフショアの所得によって、年1750億ドルのタックスギャップをもたらしているとみられる。上位1%の納税者は、所得の2割について税金を支払っていないと推定されるという。
米政界では、連邦法人税の支払いを回避していることで批判にさらされているアマゾンなどをめぐり議論がかまびすしい。この点に関してレティグは、自身の言うタックスギャップには税法上、企業や個人に認められている税額控除や控除は含まれていないと注意を促した。
税制・経済政策研究所(ITEP)の調査によると、米国の大手55社はこうした控除のおかげで2020年に法人所得税をまったく納付していない。