英医学誌も開催を危険視する「東京オリンピック」の行方

Getty Images

日本の与党幹部は4月15日、新型コロナウイルスの感染拡大が進んでいることを理由に、今夏の東京オリンピックが中止される可能性があることを示唆した。この発言は、7月からの開催を前に、既に不安定な状況にあるオリンピックに新たな不確実性をもたらした。

自民党の二階俊博幹事長は15日、TBSテレビの番組収録で東京五輪・パラリンピックについて、感染がさらに拡大し「これ以上とても無理ということになれば、やめないといけない」と発言し、その場合は開催中止も選択肢になるとの考えを示した。

二階幹事長は、この発言がソーシャルメディア上で波紋を呼んだ後、発言のトーンをやや抑えたが、大会を絶対に開催するという姿勢は示さず、「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で発言した」と述べた。

東京五輪は、1年の延期を経て7月23日の開幕が予定されているが、実現するかどうかは宙に浮いた状態だ。国際オリンピック委員会(IOC)は繰り返し開催を表明し、今年の開催が中止になった場合に「プランBはない」と述べており、選手らの組織や日本政府も開催すると述べている。

しかし、報道によると、政府は内々に中止の可能性を検討しているとされ、公衆衛生の専門家も大会の続行に懸念を示している。ロイター通信は1月に、東京五輪・パラリンピックのスポンサー企業が不確実性の中で、マーケティング計画を後退させていると報じていた。

五輪の聖火リレーは3月25日にスタートしたが、新型コロナウイルスの影響で各都市がリレーを公道から外したり、無観客で実施するなどの措置をとっている。組織委員会が3月に発表したところによると、大会が開催されるとしても、海外からの観客がいない状態で行われるという。

「五輪で感染を蔓延させたら、何のための五輪かわからない」と二階幹事長は15日に述べた。

二階幹事長の発言が注目を集めた後、日本の他の政府関係者は、五輪の開催に自信を示し、菅義偉首相は「安全で安心なオリンピックを実現するために全力を尽くすという政府の姿勢に変わりはない」と述べた。

東京組織委員会は声明で、「国、東京都、東京2020組織委員会、IOC、IPCを含むデリバリーパートナーのすべてが、今夏の大会開催に向けて完全に集中している」と述べている。
次ページ > 英医学誌が「開催を危険視する論説」を掲載

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事