男性育休の権利放棄。ブラックな働き方、なぜやめられないの?|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長


「残業=頑張っている」ではない


NYNJ和倉:国会議員であっても人間としての生活があるのは大切ですね。「残業=頑張っている」という認識を変えるためには、企業がどのような行動を取らないといけないと思いますか。また、社会としてどのような変化が必要でしょうか。

小室:時間あたりの生産性がシビアに評価される職場になることです。日本は先進国の中で唯一、期間あたりの生産性という考え方をしています。10時間で100個のリンゴを拾ったとして評価される人がいたかもしれないけれど、6時間で80個のリンゴを拾ってる人の方が、時間あたりの生産性は高く、会社に与えている利益率は実は高いのです。住友生命では、かつての評価制度は営業成績の数字のみを基準していましたが、仕事にかけた時間を考慮した時間当たり生産性を評価に加えたところ、順位が変わったそうです。

小室淑恵
日本の働きやすい環境を整えるため、国会議員のあり方から変えていくべき理由とは。

NYNJ三村:では、最後に小室さんからU30の若者に向けてメッセージをお願いします。

小室:まずは学生の皆さんが官僚や国会議員の働き方に関心を持っていただいたことが本当にありがたいです。私は20年近く、なぜ女性は働くことと子育てが二者択一であるのか、なぜ日本では長年、過労死問題が解決されないのか、という問題に取り組んできました。政府は深刻な少子化問題に直面しながらも、長い時間、それが長時間労働によって引き起こされているという繋がりに気づきませんでした。

その理由は、国家公務員が役所と家の往復だけで、私生活の時間が全くなかったからです。育児中の女性官僚には大事な仕事は任されずに、隅のポストに追いやられるようなことが続いていました。だから、まずは国家公務員こそが普通の生活を取り戻さないと私たちの問題意識のレセプターが開かない。そのためには、理不尽な要求をして残業の震源地になっている、国会議員のあり方について学生間でも呼びかけて、この問題意識をぜひ高めてほしいです。

取材を終えて


国の意思決定をする官僚や国会議員の働き方を改善することが、少子化など日本の社会に潜む様々な問題を解決する1つの突破口であるということが分かりました。私たちがテレビで観る国会答弁の裏には、このような現状があることを有権者として改めてきちんと理解し、問題意識をもつべきだと思います。


小室淑恵◎株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。1000社以上の企業へのコンサルティング実績を持ち、残業を減らして業績を上げる「働き方改革コンサルティング」の手法に定評がある。政府の産業競争力会議民間議員、経済産業省 産業構造審議会などの委員を歴任。著書に『プレイングマネージャー「残業ゼロ」の仕事術』(ダイヤモンド社)『男性の育休 家族・企業・経済はこう変わる』(共著、PHP新書)など多数。2児の母。


連載:「U30と考えるソーシャルグッド」
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文=和倉莉央(NO YOUTH NO JAPAN)

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