男性育休の権利放棄。ブラックな働き方、なぜやめられないの?|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長


NYNJ和倉:議員や大臣から官僚の働き方への配慮がないとよく聞きますが、これは議員や大臣のブラックな働き方が生んでいる悪循環でしょうか。解決するには、小室さんはどうしたら良いとお考えですか?

小室:国会の仕組みが不透明であることからなるブラックな働き方ですね。国会議員が質問通告した内容と時間を、すべてサイトで見える化することが効果的でしょう。

もう一つは、無制限に質問を受けないということ。例えば、21時から翌朝の6時までは、一旦省庁を閉めて、終電を逃さないうちに帰宅させれば、即22億円が浮きます。21時以降は国家公務員が誰も残っていないとなれば、質問通告はそれより前に送るようになるでしょう。どうしても残っている対応はテレワークでできる環境を作ることも大切です。そしてもちろんテレワークも勤務時間に勤務して残業代を支払うことです。

EUでは、勤務間のインターバル(連続休息時間)制度が導入されています。消防や警察など公的な職業であっても、仕事を終えてから次の出勤まで最低11時間あけなくてはいけません。日本の民間企業も少しずつ導入されていますが、この国の頭脳を守るためにも必要な制度だと思います。

小泉進次郎環境大臣
2020年1月17日に長男が誕生し、計12日間分の育休を取得した小泉進次郎環境大臣(Getty Images)

NYNJ 和倉:
小泉進次郎環境大臣が第1子誕生で育児休暇を取得したことで、U30世代でも男性の育休取得への関心が高まっています。日本の育休給付金は実質収入の8割カバーと世界で最も収入カバーが高い国ですが、なぜその権利をほとんどの議員は放棄しているのでしょうか。

小室:国会議員は企業に雇用されているわけではないので、育休制度や育休給付金の対象ではありませんが、逆に育休中も100%給与がもらえます。ただ、最近では「有権者ハラスメント」と注目されるようになりましたが、支持者からは「国民から1票を託された議員なんだから休むな」と要求をされるため、育休を取りづらいのです。小泉大臣も直前までとても迷っていました。

一方で「子育て世帯の悩みを分かってもらうためにも、ぜひ育休を取ってもらいたい」という有権者もたくさんいました。そこで私は子育て世代の支持者が「育休を取ってください」と署名を集めたものを手渡すなど育休取得を働きかけました。

また、日本の働き方の最大の特徴はその人にしか分からない仕事が許されていることです。そのため、他の人がその仕事を引き継げず、とても不安定な状況に陥っています。私たちがコンサルティングをするときには、仕事の属人化をやめさせることに集中しています。情報を見える化し、休んでいる人に代わって、誰でもすぐに仕事を取れるようにすることが目標です。ラグビーのように屈強な一人プレイヤーではなく、パス回しできるような仕事場を作っています。
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文=和倉莉央(NO YOUTH NO JAPAN)

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