男性育休の権利放棄。ブラックな働き方、なぜやめられないの?|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長


国会議員の働き方は「この国で1番ブラック」


NO YOUTH NO JAPAN 三村紗葵(以下、NYNJ三村):一方で、国会議員は高級な料亭で会食をしたり給料が平均と比べて高いなどのイメージがあります。国会議員の働き方の現状について教えてください。

小室:国会議員本人は、自分の意思で長く働いているかたも多いため自覚がないと思いますが、働き方はこの国で1番ブラックだと思います。彼らの働き方がこの国の残業時間の震源地になっています。昨年8月に弊社が行った調査を見ると、コロナ禍でも議員への説明には対面で呼ばれ、礼儀のためにマスクを外さないといけないといったこともあり、問題になりました。議員のブラックな働き方は、周囲の負担を生んでいるのではないのでしょうか。

また、平日は国会がらみの仕事で、週末は地元の有権者のため、議員は365日24時間休みなしで働いています。特に選挙期間は1日も休みがないので、24時間働ける人たちしか政治家になってない。こういう猛烈タイプの人たちが意思決定する立場だから、時間に制約がある人に寄り添った政策が不足してしまうのです。何に困っていてなぜ働けないのか、実態が分からない。本当にこの国の働き方を変えるなら、国会議員の働き方から変えていくべきです。

霞ヶ関のブラックな働き方はなぜやめられないのか
夜もオフィスの明かりが灯る霞が関の官庁街(Shutterstock)

NYNJ三村:国家公務員がブラックな働き方になってしまうのは、なぜでしょうか。

小室:国会議員からの質問通告が前日の深夜まで来ないことが大きな要因のひとつだと思います。

国会で質問をする野党議員は、事前に質問通告をします。大臣が質問に正確に答弁できるように、野党からの質問通告に対する答弁の下書きを官僚が書きます。本来、この下書きは前日のうちに作りたいのですが、質問通告を前日の22~23時に出す議員がいます。これは、翌日の国会開催までに準備時間の少なさからまともな答弁が用意できず、大臣が質問に窮する様子を引き出そうという野党の戦略でもあります。

さらに、質問通告がくるまでどの分野の質問をされるか分からないので、官僚は全員待機しないといけないのです。この待機に当てられる残業代は1国会あたり102億円。これは本来支払われてないものを考えると実質はその3倍、306億円あると言われています。これはすべて国民の税金です。また、待機させられた国家公務員が終電に間に合わないことから、タクシー代が22億円ほどかかっています。質問通告がもし正確な内容で16時までに各省庁に届けば、124億円がコロナ給付金に使えるはずです。

国民は、そのような手法で大臣が答弁に窮することで、何も得しません。むしろ、質問通告は2日前までに送るという本来のルールを守っていただき、大臣側も余裕をもって答弁を練って質の高い内容にしてもらいたい。あげ足とりのような国会のやり取りではなく、いい質問といい回答で、国民が政策にもっと興味を持ち、理解できるようにするべきだ。若い人からそういう声をぜひあげていただきたいと思っています。
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文=和倉莉央(NO YOUTH NO JAPAN)

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