これは、治験開始後にさまざまな問題に直面してきたアストラゼネカ製のワクチンにとって、大きな打撃となる可能性がある。だが、ファウチ所長は同時に、同社のワクチンに「否定的な見解を持っているわけではない」ことを明確にしている。
所長は4月13日に出演した英BBCのラジオ番組で、懸念されている安全性を巡る問題が解決されれば、同社のワクチンは「有効性の点で優れたワクチンだと考えている」と述べ、次のように説明した。
「米国はすでに複数社と契約を結んでおり、国内のすべての人にワクチンを接種するのに十分な量をすでに入手、または入手の予定が立っていることが明らかだ。そして、そこにアストラゼネカ製のワクチンが含まれていないということだ」
米国は3月、国内で生産された同社製ワクチン400万回分を、隣国メキシコとカナダに提供することで同意している。
昨年からトラブル続き
米食品医薬品局(FDA)が国内での緊急使用を許可しているのは、(いずれも米国の)ファイザー、モデルナ、ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナワクチンだ。
アストラゼネカ製ワクチンの米国での使用許可の取得は、昨年来、何度かつまずいてきた。同社は世界的に実施した臨床試験の結果が誤っていたとして、再度試験を実施。3月下旬、最終的に79%の有効性を確認したと発表した。
だが、その結果が発表された翌日、NIAIDは声明を発表。公表された最終的な臨床試験の結果に、古いデータが使用されていた可能性があるとして、懸念を表明した。アストラゼネカはその指摘を受け、数値を修正。ワクチンの有効性をわずかに引き下げ、76%としている。
一方、同社のワクチンを接種した人の中には、まれではあるものの、血栓ができる例が確認され、死亡した人もいることが報告されている。これにより、すでに接種を開始していた各国が同社製ワクチンの使用を中止。または50歳未満の人には接種しないなどの制限を設けている。
アストラゼネカは4月初旬までに、米国向けとして新型コロナワクチン3000万回分を準備する予定だと明らかにしていた。同社がこの目標を達成していたのかどうかは、今のところ不明だ。