ビジネス

2021.04.25

ガーナで人生が変わった。22歳がカカオビジネスを変える

Mpraeso合同会社CEOの田口 愛


目標が定まったら、あとは行動するのみだ。良いカカオを作るには、その手法を知るところから。田口は、台湾やインドネシア、タンザニアなど世界各地のカカオ農園を巡って、品質を高めるための工夫を学んだ。

ガーナではジャングルを蟻の巣状に開拓し、自生したカカオを採っている。農業というより採集に近い。ナタでジャングルを切り開きながら片道2、3時間の道のりを歩き、雨季には腰まで水に浸かりながら川を越えていく。収穫した豆を、頭に載せられる量だけ持って帰るというような状況だ。

実は、カカオの味の決め手は「発酵」にある。ガーナ以外の整備された農園では専用施設を設け、様々な工程を分業にしているが、設備を整えて効率化することは難しい。まずは木や石を除くところから始め、カビが生えないようにカカオをしっかり乾燥させ、発酵にムラがないようにかき混ぜ、酸味が出過ぎないように発酵の具合を調節することを徹底してもらった。


画像提供:Mpraeso合同会社

同時に、農家に「良いカカオ」の基準を知ってもらうことも重要だ。美味しいカカオが何たるかがわからなければ作りようがない。「美味しい」という味を農家と共有し、その味に近づけていった。

既存システムのハック


ようやく品質の良いカカオが作れるようなったが、ガーナでは政府のカカオ省(ココボード)が輸出を一括で取り仕切っており、個人や企業から輸出することはできない。また、ココボードの品質管理は極めてずさんで、不純物が混ざっていようと、重量による一定価格での買取となってしまう。

しかし、田口が目指したのは品質に応じた買取価格の実現だ。「Mpraeso」を立ち上げ、政府と粘り強く交渉を重ねながら、既存のシステムを応用する方法を考えついた。

まず、Mpraesoが農家から品質に応じた価格でカカオを買い取り、それをココボードに納める。その後、ココボードにはMpraesoのカカオを他と混ぜずに管理してもらい、日本のカカオ商社に仕入れてもらう。そこからMpraesoのラベルが付いたカカオを日本のショコラティエに高く買ってもらい、最終的に商社から日本での取引額に応じた利益をMpraesoに分配してもらうのである。

この複雑な仕組みは、ビジネス的にもかなりの冒険である。Mpraesoは農家から品質に応じた適正価格でカカオを買い取るが、ココボードの買取価格は品質に関係なく一定、かつ天候や相場によっても変動するため、その時点ではどうしても赤字になってしまう。

また、農作物なので通関に時間がかかることもあり、日本のショコラティエにカカオを仕入れてもらってからMpraesoが売上を得るまでには4カ月以上の時間がかかる。そのため、会社の財務状況は不安定になる。しかし、農家のことを考えると、この方法を実現するしかなかった。
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文・写真=入澤諒

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