中国のデジタル通貨発行は、「貨幣の創造的破壊」の始まりだ

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一方、中国政府は、秩序と匿名性が保たれたシステムを介して行われる取引を完全にコントロールし、どこにどれだけの金額が移動したかを把握して、不審なパターンが検出された場合は調査に着手できる。通貨をプログラム可能にすることにより、他の形の自由度も得られる。例えば、経済活性化のために、通貨の一部に有効期限を設けることができる(このような試みは、すでに実験的に実施されている)。

中国は今のところ、すでに流通している以上の通貨を発行する予定はなく、発行したデジタル人民元と同額の人民元紙幣を無効化している。しかし、現時点でこのような金融政策を実施しているからといって、将来的に変更できないわけではない。

中国のように電子決済の利用が高度に普及した市場では、公的なデジタル通貨を導入することにより、日常的な貨幣流通を民間企業任せにすることに伴う脆弱性やリスクも軽減できる。さらに、デジタル通貨の導入にはさまざまな障害が見込まれる。その流通に努め、利用法を模索し、問題点と可能性を洗い出すだけでも、中国は他国と比べて大きなアドバンテージを手にすることができ、国際取引の場における自由度が上がるだろう。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の論調からも明らかだが、中国はデジタル通貨に数々の重要な利点を見出しており、ほかの主要国もこれらを見逃すはずがない。したがって、短期・中期的な見通しは明らかだ。遠からず、デジタルドルやデジタルユーロも登場するだろう。60カ国以上がデジタル通貨発行の検討に入っており、今後はデジタル通貨、紙の現物通貨、そして、価値が徐々に安定しつつある暗号通貨がしばらく共存することになると考えられる。

我々は今、たいていの人があり得ないと考えていた状況に直面している。すなわち、貨幣の創造的破壊だ。その影響はとてつもなく大きなものになるだろう。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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