2021年は「AI普及の分水嶺」になると私たちは提唱しています。今年は企業活動や日常生活にAIが隅々まで浸透し、その活用が真に問われる最初の年となるでしょう。しかし手段を目的化することなく、日本経済をAIで再興させるにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか。
今回はAI関連技術の利用の実態に踏み込んで紹介するにあたり、AI普及の分水嶺に起こる大きな「4つの変化」と乗り越えるべき「3つの壁」について解説します。
AI普及元年に起きる変化・1「AI Is Everywhere」
アクセンチュアでは毎年、世界中のビジネスリーダーへの調査にもとづいて、向こう3年間のデジタルトレンドをまとめたレポート「テクノロジービジョン」を発表しています。昨年版の「テクノロジービジョン2020」で、「Digital Is Everywhere(デジタルが当たり前の存在に)」というキーワードが登場しました。仕事や日常生活、はたまた非日常的なエンターテイメントを楽しむときまで、ありとあらゆる場所でデジタル技術は使われ、人々の暮らしの中に染み込んでいます。もはや、デジタルなしでは現代社会は回らないといってもよいでしょう。
その根拠となるのが次の3つの数字です。
●50%:世界の人口の半数にあたる45億人がインターネットにアクセスしている。
●6.4時間:現代の消費者は1日あたり6.4時間をオンラインで過ごしている。その際に使用するスマホなどの様々なデバイスはもちろん常時インターネットに接続されている。
●52%:生活者の52%が「テクノロジーが日々の生活において重要な役割を果たしている、もしくは、ほぼ全ての側面に深く根付いている」と回答。さらに19%は「テクノロジーは日常生活と密接に結びついており、切っても切り離せない存在」と考えている。
▼DIGITAL IS EVERYWHERE
生活者にとって、テクノロジーは完全に日常の一部として浸透しているアクセンチュア作成/50%|出典: Internet World Stats: Usage and Population Statistics. (n.d.)./6.4hours|出典: Salim, S. (2019, February 4). More Than Six Hours of Our Day Is Spent Online. Digital Information World./52%|出典: Technology Vision 2020 research調査対象は、中国、インド、英国、米国の生活者2000人
上の数字は、新型コロナウイルスのパンデミック以前の数値ですので、現在ではデジタルの活用がより一層進んでいるでしょう。もはや「PCやデジタルツールを仕事で使わない」という日はなく、私たちが利用するサービスや場所は何らかの形でデジタル技術を取り込んでいます。
特にデジタル技術の中でもAI活用の躍進は顕著であり、コロナ禍で、物理的に移動する、対面で仕事するといったことが難しくなったいま、人をサポートする分野でAIの活用はますます進んでいます。2021年は、いわば「AI Is Everywhere」が確立される1年となるでしょう。ビジネスにおいてAI活用はまさしく「ニューノーマル」となるのです。
一方で、「AIが社会に浸透する」とは具体的にはどのようなことなのでしょうか。AIがカバーできる領域が広がり、これまでのような「特定タスクの自動化・高度化による業務効率化」といった限定的な活用だけではなく、「ビジネスのあり方そのものを変えるような存在」にもなっていくことを意味しています。さらに経営の意思決定に資する有益な情報を提供することで、経営を支えるパートナーとしての活用も定着すると予想されます。