AI活用は日常となるか? 起きる変化と「3つの壁」──2021年がAI普及元年となるワケ

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AI普及元年に起きる変化・2「AIがビジネスの主軸に」


AIは、いまやトップ企業がビジネスやサービスの主軸に据える存在です。

それは世界時価総額ランキングの変化を見ると明らかです。20年前、2001年当時は、インターネット産業が勃興し「ドットコムバブル」としてIT産業が盛り上がったばかりであったこともあり、時価総額ランキングにおいてはまだ電機や製薬、石油・化学、金融サービス、小売、通信といった業界の企業が上位であり、デジタル関連企業としては唯一、マイクロソフトだけがランクインしていました。

しかし2020年、上位10社の顔ぶれは全く違ったものになりました*1 。20年前にも入っているのはマイクロソフトだけで、アップルやアマゾン、アルファベット(グーグル)、フェイスブック、アリババグループ、テンセント、テスラとマイクロソフトの計8社は、AI開発や活用を何らかの形で事業の重要な主軸の1つとしています。

*1 2000年、2020年それぞれの1年間において、AI関連(Artificial Intelligence, Data Science, Machine Learning等)の記事数をアクセンチュアにて独自集計し、 企業別記事数ランキングTOP80に含まれる企業をAI開発・活用先進企業として定義


事業がAIと直接的な関連性が低いのは、国有石油会社であるサウジアラムコと投資ファンドとしての側面も強いバークシャー・ハサウェイの2社のみ。AIが成長企業における共通のサクセスファクターとなっている証拠だといってよいでしょう。

▼AI技術の活用がNEW NORMALに

トップ企業の多くが、AI技術をビジネスやサービスの主軸に据える時代に

時価総額ランキング
単位:億米ドル
アクセンチュア作成

AI普及元年に起きる変化・3「AIが社会課題を解決する存在へ」


日本でもAIが社会に貢献する事例が増えています。医学への貢献事例として、前回(第1回)紹介した国立国際医療研究センターとの共同研究および、東京女子医科大との取り組みをご紹介しましょう。

医療費の3割を占めるとも言われる生活習慣病。この大きな社会課題に対応するため、国立国際医療研究センターとの共同研究では「生活習慣病リスクのAI予測モデル構築」を進めています。予防医学の専門家であり、国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部・部長の溝上哲也先生に協力いただき、生活習慣病のリスク要因について疫学的に解釈可能なAI予測モデルを構築しています。

また、高血糖状態が長期間続くと、腎臓の疾患へと繋がります。東京女子医科大と進めている腎移植治療における予後予測に関する研究は、腎移植において日本トップレベルの実績・経験を有する東京女子医大の病院長、田邉一成先生とともに進めているプロジェクトで、セキュリティとプライバシーに適切に配慮した形で進行中です。腎移植後の生着率予測や投薬シミュレーションに取り組んでおり、将来的には臨床現場で効果的な治療法の選択に繋げられるよう研究を進めています。

医療業界でのAI活用においては、人命という何よりも重要なテーマを扱うこともあり、予測結果のブラックボックス化が重大な課題として認識されていることからも、「説明可能なAI(Explainable AI)」の開発が喫緊の課題であるといえます。

また、ビジネスにおいてAIがより重要な役割を担うことが求められるからこそ、日本でも「AIの持つリスク」が顕在化していくと予想されます。分析結果の説明可能性だけでなく、倫理的な観点での検証やAIの結果の透明性を担保する「責任あるAI(Responsible AI)」の視点も欠かせません。医療業界で先行していた「責任あるAI(Responsible AI)」への対応を、2021年からはあらゆる企業が求められる可能性があります。その対応如何によって、企業のAI活用は明暗が分かれる年になるでしょう。こちらについては、第3回でより詳細をご紹介していく予定です。
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文=保科学世(アクセンチュア)

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