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新たな買収候補は?


今回の買収の伏線として、マイクロソフトは昨年、ニュアンス社と提携し、医師と患者の会話を記録し、電子カルテに自動的に記入する製品「Dragon Ambient Experience」を発売した。この製品は、「パンデミックに端を発したバーチャル診察の圧倒的な増加に対応する、遠隔医療向けのソリューションである」と、当時のプレスリリースには書かれていた。

その後、マイクロソフトはMicrosoft Cloud for Healthcareの構築を発表し、10月に正式にサービスを開始していた。グリフィン証券のジェイ・ヴリーシュワーは、「音声認識と会話型AIの分野に、ニュアンス社は進化をもたらす。マイクロソフトは以前からこの分野に多大な投資を行ってきた」と述べている。

ニュアンス社の顧客には、アテナヘルスやジョンズ・ホプキンス医学校、Cerner、Epic、ヴァンダービルト大学メディカルセンター(VUMC)、エールニューヘブンヘルスシステム(YNHHS)など、最大手のヘルスケア企業がそろっている。KeyBanc Capital MarketsのアナリストのMichael Turitsは、「マイクロソフトは、これらの顧客を取り込むことで、Azureへのトラフィックを増やすことができる」と述べている。

アナリストの中には、マイクロソフトのTikTok買収の試みが失敗に終わったのは、幸運だったと言う人もいる。「マイクロソフトにとって最高の出来事は、あの取引が起こらなかったことだ。仮に買収に成功していたら不確実性が増すことにつながった」とウェドブッシュ証券のアイブスは話した。

しかし、マイクロソフトの動きからは、コンシューマー市場への意欲が伺える。ビデオゲームに特化したメッセージングアプリのDiscordは、コンシューマー向けの製品であり、一部のアナリストは同社のゲーム事業とうまくかみ合うと考えている。

マイクロソフト社の今後の買収対象はまだわからないが、同社の現行製品の成長を促進できる企業である可能性が高いと、サンフォード・C・バーンスタインのモアドラーは話す。「彼らは、順調に成長していたり、確実なリターンが見込める企業を買うのではない。自社のビジネスをポジティブに破壊できる企業を買うだろう」と彼は続けた。

編集=上田裕資

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