服から服をつくる。選手とファンの衣類でユニフォームを生む新発想

日本環境設計 プロダクトマーケティング課課長 中村崇之

年間の衣類廃棄量について、日本では約100万トンにもなると言われている。昨年度は新型コロナウイルスの影響もあり、外出自粛期間中に衣類整理を行う人も多かったであろう。廃棄される衣類のうち、8割が焼却か埋め立てられているという。Tシャツで換算すれば、その量は100億枚分にも及ぶ。

日本環境設計では、「大量に捨てられている服を循環させたい」という想いから、服をリサイクルして新たな服を作り販売。サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現のため、“循環”を「サスティナブルな社会の実現」の一つの答えとして事業に取組んでいる。プロダクトマーケティング課課長 中村崇之に聞いた。

廃棄される石油製品からポリエステルを作る


廃棄される服の問題は、日本だけのものではない。世界中の繊維産業のごみは、工場なども含めると約9200万トンに達し、どの国でも繊維ごみの処分に頭を悩ませている。服は綿で作られているようなイメージもあるが、実は綿の生産には広大な土地と膨大な水が必要であり、環境に影響を与えるため生産量は横ばいだ。現状では、世界で生産されている繊維の約6割はポリエステルであり、その総量は約5200万トンに及ぶ。

日本環境設計は、このポリエステルに着目した。

素材に触れて説明する中村

「ポリエステルは石油から生産される繊維で作りやすい。そして、汎用性が高く、追加機能(撥水、UVカットなど)を付加できる、といったメリットがあるんです。石油製品であるポリエステルが悪いのではなく、廃棄されるものからポリエステルをつくれば持続可能になると言う考えです」(中村)

発想の転換を行ったのだ。「服から服を作る」事業が始まった。

水平リサイクルを可能にしたテクノロジー


同社が2016年に買収した子会社、ペットリファインテクノロジーは、ペットボトルのリサイクルを25年に渡って行っている会社。この技術を繊維向けに転用したのが、北九州工場で行っている独自のケミカルリサイクル技術「BRING Technology(TM)」である。この技術の開発によって、服から服をつくる水平リサイクルが可能となった。

「日本では、2000年に容器包装リサイクル法が制定され、ペットボトルの回収が安定して行えるようになりました。回収されたペットボトルの半数はリサイクルされて繊維に。国内では約60万トンのペットボトルがリサイクルされていますが、半数の約30万は繊維素材になっています。

しかし、これまでのリサイクル技術はペットボトルに熱を加えて溶かすものだったため、ペットボトルの色が抜けず、不純物や汚れが取り除けません。さらに、この方法ではリサイクルは1度しかできません。こうした課題を解決するために開発されたのが、BRING Technology(TM)。これは分子レベルでのリサイクル方法で、何度でもリサイクルが可能な技術なのです」(中村)

新しくできた繊維を見せる中村
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文=上沼祐樹

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