「コロナワクチンは特許放棄を」 バイデン政権、党内から圧力

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ジョー・バイデン米大統領は、新型コロナウイルス感染症のワクチンに関する知的財産権の放棄を支持するか検討している。貧困国でのワクチン普及に役立つとして放棄を求める声が民主党や国際医療団体から高まる一方で、メーカー側は変異株への対応などに支障をきたしかねないとして反対している。

インドや南アフリカなどおよそ100カ国は新型コロナワクチンについて、独自に開発した企業だけに認められている特許権保護を一時停止するよう世界貿易機関(WTO)に求めている。新型コロナワクチンの開発にこぎつけた企業は、大手製薬企業の米ファイザーや英アストラゼネカなど一握りにとどまるのが現状だ。

特許権の保護を一時停止すれば、ほかの企業もワクチン製造のノウハウが利用できるようになり、自社でワクチンをつくるのに必要な情報を得られる。こうすればワクチンの生産量が増え、遅れ気味の接種にも弾みがつくとの見方が多い。

これに対して、ワクチンを手がける主要メーカーは、ジェネリック(後発)ワクチンの生産を認めれば新たな変異種との戦いで「混乱」を引き起こし、ワクチンの接種ペースが速まることもないと主張。これまでのところ、米国でも英国や欧州連合(EU)でも特許放棄への支持は広がっていない。

それでも、バイデンはWTOによる特許保護除外を支持するか、なお検討中だ。バイデン政権は途上国での新型コロナ終息に向けた取り組みの一環として、世界保健機関(WHO)主導のワクチン共同購入・分配の国際枠組み「COVAX(コバックス)」に40億ドル(約4360億円)の支援も約束している。

この問題に関して、バイデンは民主党から大きな圧力にさらされている。政治サイトのポリティコによると、知的財産権放棄を支持する民主党議員はバーニー・サンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員をはじめ、約100人にのぼる。

特許放棄はこのほか、多くの慈善団体やWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長、ローマ教皇フランシスコらも支持している。一方、トム・コットン率いる共和党上院議員グループは、知的財産権はイノベーションを促進するものだとして、バイデンに特許放棄を支持しないよう求めている。

ブルームバーグによると、新型コロナワクチンは4月上旬までに世界の全人口の約4.6%に接種できる量が供給されているが、配布は欧米の富裕国に偏っている。アフリカ本土で人口の0.5%超がワクチン接種を受けた国はモロッコだけだ。

世界銀行は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって世界全体で4000万人が極度の貧困に陥ったと推定している。

編集=江戸伸禎

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