川村雄介の飛耳長目

前年同期比1800分の1、といえばほとんどゼロである。昨年末の日本国内インフルエンザ感染者数だ。1日あたりでは、わずかに10人、その前年は1万8000人もいた。

ちなみに、日本中を不安と混乱に陥れている新型コロナは4000人程度だった。

この2種類の数字は一体何を意味するのだろうか。マスクや手洗いの効果だけなのか、コロナもインフルエンザもウイルスなので、交差免疫やら干渉作用やらがあるのか。あるいはファクターXなるものが存在するのか。

医療崩壊だという。国際的に見て、日本の医師や病院数は決して少なくはない。桁違いの感染者や死者を出している欧米に比較すれば、はるかに余裕があるはずなのに、何が欠けているのか。医師会やテレビの「専門家」は行政を批判し、危機だと叫んでいるが、街中の民間クリニックはガラガラ。他方で、最前線の病院で命がけの医療従事者たちは、メディアにしゃしゃり出ず、必死に使命を遂行している。

政府はたたかれっ放しである。対応が後手だ、不徹底だ、とメディアは非難一色だ。確かに市民感覚としてはイライラが募る。自分たちは1年近く三密を避けマスク生活だから、ストレスがいや増す。不眠不休でコロナ対策に当たる行政現場の実情などは目に入らない。

人間は一面的で偏った見方に引っ張られる。森羅万象は常に多面的であり、表も裏もある。縦から見るだけではなく横から見る必要があるし、外からだけではなく内から分析する大切さもある。

コロナ予防策しかり、医療崩壊しかり、政治不信もしかりである。「通説」と別の角度から見ると、風景はがらりと変わる。有名作家が、首相会見を「原稿の棒読み」だ、と軽蔑していたが、正確無比な情報と見解を伝えるために、関係者がどれほど慎重な検討とプロセスを経ているか、ご存じないのだろう。国の正式な会見と、政策に責任を負わない作家の「発信」とでは、全く重みが違う。スタンドプレーは無用、棒読みでなければならないのだ。

文=川村雄介

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