日本の都市のDXは進むのか 官民連携を強化する「スーパーシティ法」とは

日本でもデジタルトランスフォーメーションへの道が拓かれようとしている(Photo by Unsplash)


・つくば市では、さまざまなスタートアップと連携したオンライン医療サービスの導入が進められています。

・前橋市のスーパーシティプロジェクトの公募には、155社の民間企業が応募しており、スマートシティプロジェクトに対する民間企業の関心の高さが伺えます。

都市の「スマート化」への課題


これらの努力にもかかわらず、日本は、都市の「スマート化」を進める上で大きな課題に直面しています。従来、各都市は投資と認知度の獲得のために競争を続け、長期戦略の策定、テクノロジー政策を採用、世界のテクノロジーベンダーとの個別交渉など、連携することなく進めてきたたことが原因で多くの苦労がありました。

煩雑過ぎる調達プロセスや、断片化した時代遅れのシステムへの依存などが相まって、結果的に失敗に終わってしまう取り組みが多くありました。世界の都市が経験してきたこれらの障壁が、Society 5.0が目指すデジタルトランスフォーメーションを、意欲のある都市が実現するのを阻んでいるともいえます。

世界経済フォーラムは、マルチステークホルダー・アプローチにより、こうした課題へのソリューションの提供に向け、取り組みを進めています。世界経済フォーラム第四次産業革命センターでは、G20 Global Smart Cities Alliance (GSCA) に世界の専門家の知見を集約し、規模に関わらず様々な都市が学ぶことのできるグローバルな基準を具体化し、共有しています。2019年に大阪で開催されたG20サミットでの表明以来、日本は同アライアンスを創設期からサポートしてきました。

このように知見や知識を共有することは、プライバシー、インターオペラビリティ(相互運用性)、ビジネスモデルなどの重要な課題に関する議論の収斂につながります。グローバルな基準に向けた収斂は、日本にとって大きな意味を持ちます。

米国や中国といった大きな市場は独自の基準を設定すればそれを遵守してもらえますが、日本を含む他の国々にこのやり方は通用しません。グローバルな基準がなければ、日本は閉じられたプロダクトエコシステムの中に取り残されてしまう可能性があるのです。

世界経済フォーラムは、オープンでグローバルな未来の実現に向けて共に構想を練るため、日本のスマートシティのコミュニティが一同に会する機会を設けています。個別の最適化を目指すのではなく、グローバルで開かれた市場において人々の暮らしを改善していくために、デジタルサービスをどう実装するべきでしょうか。そして、そのために必要となるグローバルなルール作りを、どのように進めていけば良いでしょうか。

日本で開催されるグローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミットが、これら課題の解決に向けた駒を進める好機となることを期待しています。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Yuta Hirayama, Project Specialist IoT Robotics and Smart Cities, World Economic Forum, C4IR Japan; Rushi Rama, Lead, World Economic Forum

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