アフリカ連合に参加する国・地域は55あるが、「アフリカベンチャー投資」におけるアフリカのストーリーはいくつかの国に集中している。2020年のアフリカベンチャー投資額は、トップ2のナイジェリアとケニア(共に約3億ドル)に、エジプト、南アフリカが続く。そしてガーナが続くが、投資額は4位の南アフリカの半分以下だ。
ディール数では、エジプトがトップの86件で、南アフリカ(72件)、ナイジェリア(71件)、ケニア(52件)と続く。ドローンスタートアップのジップラインの成功や“デジタル立国”で注目されるルワンダの案件は4件、1160万ドルという数字だ。
テックベンチャーを牽引し続けているセクターはフィンテック。主要フィンテック企業は、イーコマース関連のサービス展開もすすめている。ほか、アグリテック、ヘルステック関連のベンチャーが資金調達を実施。エネルギー系のベンチャーは、いわゆる従来のVCではなく、インパクト投資家からの資金調達がメインのようだ。
2020年は世界的に経済が不安定だったこともあり、ベンチャー投資における大企業の存在感が欠けていた。企業にとって長期的な計画が立てづらく、投資リスクを取りづらい状況だったことが予測される。報告書では、企業がスタートアップを活用したオープンイノベーションの重要性があらためて指摘されている。
アフリカ主要国間でも異なるベンチャー環境
アフリカにおけるベンチャー投資をリードするトップ4カ国でも、エコシステムの状況はそれぞれ異なる。ナイジェリアはアフリカ最大の経済圏で、そのGDPは4481億ドル(2019年:世界銀行)。人口もアフリカ最大の2億人で、アフリカ全体の6分の1を占める。
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また、PwCが2019年に発行した報告書「Strength from Abroad - The Economic Power of Nigeria’s Diaspora」によると、国連の公式数字で世界に130万人ほどいるとされるナイジェリアからの移民(2017年データ)だが、数にはナイジェリア移民の子どもは含まれておらず、非公式データによると、その数はおよそ1500万人程度いると推定される。主な移民先は米国(28万人)や英国(21万人)だ。
ナイジェリアは、その規模と今後の成長が期待できる新しい市場である一方で、ビジネス環境においては課題が多い。世界銀行が毎年発表しているビジネス環境のランキングにおいて、ナイジェリアは190カ国中、総合131位である。個別ランキングでは、開業が105位、納税が159位、国際通商が179位。
そのため、国際的な投資家からの資金調達を狙うナイジェリアのスタートアップの多くは、国外(米国など)に本社をおいている。ナイジェリアを代表するフィンテック企業、フラターウェーブ(Flutterwave)はサンフランシスコが本社だ。