事業は高い志を持ってやらなければいけない──孫正義流「成長」への心得

Tomohiro Ohsumi / Getty Images

ソフトバンクは、いまや日本を代表する企業のひとつになりました。

携帯電話会社として毎日のようにテレビCMで社名が連呼され、プロ野球の球団も持ち、投資会社としても世界的に知られるソフトバンクですが、立ち上げ時はコンピュータ用パッケージソフトの流通業からスタートしています。

その後、出版事業を手がけ、上場後はM&AやIT関連企業への投資を積極的に行い、知名度を上げていきます。展示会事業のコムデックスやヤフーへの投資は、よく知られているところです。

そして投資した会社が次々に上場するなど成果が出始めると、ブロードバンド事業に大きく舵を切り、通信業の領域へと踏み出していきます。2006年にボーダフォンを約1兆7500億円で買収。携帯電話キャリアの大手の一角として、ソフトバンクは一気にそのブランド、さらには収益力を高めていくことになります。

その後も事業拡大の意欲は衰えることなく、2013年、全米第3位の携帯電話会社、スプリント・ネクステルを子会社化。さらにハイテク製造業にも目を向け、イギリスの半導体設計企業であるアームへの投資も大きなニュースとなりました。

2017年には1兆円を超える最終利益を出し、10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を発足。投資したベンチャーは次々に世界に知られる企業になっていき、同時に大きな収益も上げています。

いまや子会社は世界で約1500社、関連会社も400社を超えます。ソフトバンク40年の歴史を紐解くと、見えてくるのは飽くなき事業拡大、そしてアグレッシブな企業成長です。そして現在も、それは継続しています。

これほどの企業になってもなお、大胆な挑戦をやめないのは、なぜなのか。その理由を垣間見ることになったのは、ソフトバンクの創業者である孫正義さんと、経営学者である野田一夫さんとの対談でした。

後に日本で最も有名になる起業家・孫正義がまだまったく無名の頃、その能力をいち早く見抜いていたのが、野田さんでした。私が取材したこの対談で、孫さんは、まだ創業まもなく、若かった時代に受けた野田さんからの教えが、後の自分をつくったと語ったのです。
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文=上阪 徹

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